今回のテーマは、「不動産」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 3級 学科試験(2024年1月28日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 3級 学科試験(2024年1月28日実施)【第1問】(21) ~ (25)
【第1問】 次の各文章(21)~(25)を読んで、正しいものまたは適切なものには〇で、誤っているものまたは不適切なものには✖で答えなさい。
(21) 不動産の登記記録において、所有権の移転に関する事項は、権利部(甲区)に記録される。
(22) 宅地建物取引業法によれば、宅地または建物の売買の媒介契約のうち、専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、依頼者に対し、当該契約に係る業務の処理状況を2カ月に1回以上報告しなければならない。
(23) 建築基準法によれば、建築物が防火地域および準防火地域にわたる場合、原則として、その全部について、敷地の過半が属する地域内の建築物に関する規定が適用される。
(24) 不動産取得税は、相続人が不動産を相続により取得した場合には課されない。
(25) 不動産投資に係る収益性を測る指標のうち、純利回り(NOI利回り)は、対象不動産から得られる年間の総収入額を総投資額で除して算出される。
一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 3級 学科試験(2024年1月28日実施)問題指示文一部改変
正解: | (21) 〇 | (22) ✖ | (23) ✖ | (24) 〇 | (25) ✖ |
それでは、各問を検討していこう。
問題は、特に指示のない限り、2023年10月1日現在施行されている法令等により出題されているが、本稿では正解及び解説は執筆時点で施行されている法令等に基づいて執筆する。
(21) 〇
不動産登記記録の構成
不動産登記記録は、表題部と権利部(甲区・乙区)から構成されている。
不動産登記は、土地は一筆ごと、建物は一個ごとに記録される。データ化されて登記所(法務局)に備えられている。
表題部
登記義務あり※
土地(登記原因、所在、地番、地目、地積など)
建物(登記原因、所在、家屋番号、種類、構造、床面積など)
※所有権を取得してから1か月以内に所有者が申請しなければならない。
権利部
登記義務なし※
甲区(所有権に関する事項(差押も含む))
乙区(所有権以外の権利に関する事項(抵当権、賃貸権など))
- ※2024年4月1日以降は相続登記が義務化される予定。
- 土地登記の地番、建物登記の家屋番号は、必ずしも住居表示と一致しない。
(類題)抵当権の設定を目的とする登記では、債権額や抵当権者の氏名または名称は、不動産の登記記録の権利部乙区に記載される。〇
(22) ✖
宅地建物取引業法によれば、宅地または建物の売買の媒介契約のうち、専任媒介契約を締結した宅地建物取引業者は、依頼者に対し、当該契約に係る業務の処理状況を2週間に1回以上報告しなければならない。
媒介契約の種類と概要
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | ||
---|---|---|---|---|
依頼方法 | 業者 | 複数の業者に 依頼可能 | 複数の業者に 依頼不可 | 複数の業者に 依頼不可 |
自己発見 | 可能 | 可能 | 不可 | |
契約期間 (有効期間) | 自由 | 3か月以内 | 3か月以内 | |
依頼者への報告義務 | なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 | |
指定流通機構への 物件情報の登録 | なし | 契約日の翌日から 7日以内 | 契約日の翌日から 5日以内 |
(類題)専任媒介契約の有効期間は、3ヵ月を超えることができず、これより長い期間を定めたときは、その期間は3ヵ月とされる。〇
2級 学科試験(2023年5月28日実施)問題 42ー4
(23) ✖
建築基準法によれば、建築物が防火規制の異なる地域にまたがる場合、建築物の全部に防火規制の厳しい方の制限が適用される。
したがって、建築物が、防火地域および準防火地域にわたる場合、建築物の全部に、防火地域内の規制が適用される。
(類題)建築物が防火地域および準防火地域にわたる場合においては、原則として、その全部について防火地域内の建築物に関する規定が適用される。〇
2級 学科試験(2023年5月28日実施)問題 46ー4
(24) 〇
不動産取得税は、相続人が不動産を相続により取得した場合には課されない。
不動産取得税
不動産を取得した者に対して不動産の所在する都道府県が課税する。
課税対象
登記の有無や有償無償に関わらず、不動産の売買、交換、贈与、新築、増改築による取得が課税対象。なお、相続、遺贈(相続人以外の人になされた特定遺贈を除く。)、法人の合併等による取得は課税されない。
課税標準(固定資産税評価額)が以下の額に満たない場合は、課税されない。
- 土地 10万円
- 家屋 建築(新築、増改築)は1戸につき23万円、売買、贈与、交換などは1戸につき12万円
税額
不動産取得税 = 固定資産税評価額× 税率
本則は、4%であるが、特例により3%(2024年3月31日までの取得)
宅地の課税標準の特例
課税標準(固定資産税評価額)× 2分の1
住宅の課税標準の特例
控除額 | 床面積の要件 | |
---|---|---|
新築住宅(自己居住用、貸家) | 固定資産税評価額 ー 1,200万円(認定長期優良住宅の場合、最高1,300万円) | 50㎡(戸建て以外の貸家は40㎡)以上 240㎡以下 |
中古住宅(自己居住用のみ) | 新築した時期によって、100万円~1,200万円が控除できる。 | 50㎡以上240㎡以下 |
(類題)不動産取得税は、相続や贈与により不動産を取得した場合は課されない。〇
2級学科試験(2022年5月)問題 47ー1
(25) ✖
不動産投資に係る収益性を測る指標のうち、純利回り(NOI利回り)は、対象不動産から得られる年間の営業純収益(年間収入の合計額-諸経費)を総投資額で除して算出される。
不動産の投資判断
表面利回り(単純利回り)(%)
=$\frac{年間収入の合計額}{総投資金額(自己資金+借入金)}×100$
NOI利回り(純利回り)(%)営業純利益の「Net Operating Income」の略称
=$\frac{年間収入の合計額-諸経費}{総投資金額(自己資金+借入金)}×100$
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