FP1級の過去問を解こう(2025年1月)「公社債への投資」

FP

今回のテーマは、「公社債への投資」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2025年1月26日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2025年1月26日実施)【第2問】

【第2問】 次の設例に基づいて、下記の各問(《問54》~《問56》)に答えなさい。
《設 例》

《問54》 《設例》の〈X社とY社の財務データ等〉に基づいて、Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~⑦に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、計算結果は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。また、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
〈自己資本当期純利益率〉
Ⅰ 「X社とY社を自己資本当期純利益率で比較すると、X社の値が( ① )%、Y社の値が□□□%であり、Y社の値のほうが上回っています。この自己資本当期純利益率について、売上高当期純利益率、使用総資本回転率、( ② )の3指標に分解すると、売上高当期純利益率については、X社の値が( ③ )%、Y社の値が□□□%であり、使用総資本回転率は、Ⅹ社の( ④ )回に対して、Y社は□□□回、( ② )は、X社の( ⑤ )倍に対して、Y社は□□□倍となります。この結果から、自己資本当期純利益率の比較において、Y社の値がⅩ社の値を上回る
主な要因は、売上高当期純利益率によるものであると考えられます」
〈負債比率〉
Ⅱ 「X社の負債比率は( ⑥ )%、Y社の負債比率は□□□%です。一般に、負債比率が低いほど財務上の安全性は高くなり、負債比率が100%以下であれば、財務状態は良好と判断されます。なお、負債比率が高いほど、( ② )は大きくなります」
〈配当性向〉
Ⅲ 「X社とY社を株主への利益還元の度合いを測る指標である配当性向で比較すると、X社の値が( ⑦ )%、Y社の値が□□□%であり、Y社の値がX社の値を上回っています」

《問55》 《設例》の〈X社とY社の財務データ等〉に基づいて、Y社の損益分岐点比率を求めなさい。〔計算過程〕を示すこと。なお、計算過程においては端数処理せず、〈答〉は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。
また、変動費は売上原価に等しく、固定費は販売費及び一般管理費に等しいものとする。

一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>【第4問】(2025年1月26日実施)抜粋

正解
《問54》
① 6.91(%) ② 財務レバレッジ ③ 3.73(%) ④ 0.73(回)⑤ 2.52(倍) ⑥ 151.01(%) ⑦ 31.07(%)
《問55》
81.45(%)

《問54》

自己資本当期純利益率(ROE)とは?

ROE(Return on Equity)は、企業が株主から預かった資本(自己資本)を使って、どれだけ効率的に利益(当期純利益)を生み出しているかを示す指標である。

$ROE=\frac{当期純利益}{自己資本}$×100

自己資本= 株主資本+その他の包括利益累計額合計

X社=104,000+45,000=149,000
Y社=189000+58000=247,000

X社(ROE)=$\frac{10,300}{149,000}×100=6.91$%
Y社(ROE)= $\frac{23,000}{247,000}×100=9.31$%

ROE(自己資本当期純利益率)を3つの指標に分解する方法として、デュポン・システム(DuPont分析)がよく使われる。これはROEを以下の3つの要素に分けて、企業の収益性・効率性・財務レバレッジを分析する手法である。

デュポン分析によるROEの3分解

ROEは次のように分解される。

$\text{ROE} = \text{当期純利益率} \times \text{総資産回転率} \times \text{財務レバレッジ}$

当期純利益率(Net Profit Margin)
式:$\frac{\text{当期純利益}}{\text{売上高}}$
意味:売上高に対してどれだけの利益を残せているか。
ポイント:コスト管理や価格戦略が影響する。

総資産回転率(Total Asset Turnover)
式:$\frac{売上高}{総資産}$
意味:企業が保有する資産をどれだけ効率的に使って売上を上げているか。
ポイント:資産の効率的な運用が求められる。

財務レバレッジ(Equity Multiplier)
式:$\frac{\text{総資産}}{\text{自己資本}}$
意味:自己資本に対してどれだけの資産を運用しているか(借入などを含む)。
ポイント:借入による資本効率の向上とリスクのバランスが重要。

この分解のメリット

収益性・効率性・財務構造の3つの観点から企業を分析できる。
ROEが高い理由を具体的に把握できる。
改善すべきポイントが明確になる。

(売上高当期純利益率)
X社=$\frac{10,300}{276,000}=0.0373×100$=3.73%
Y社=$\frac{23,000}{310,000}=0.0741×100$=7.41%

(使用総資本回転率)
X社=$\frac{276,000}{376,000}=0.734$(回)
Y社=$\frac{310,000}{416,000}=0.745$(回)

財務レバレッジ
X社=$\frac{376,000}{149,000}=2.52$(倍)
Y社=$\frac{416,000}{247,000}=1.68$(倍)

(負債比率
$\text{負債比率} = \frac{\text{負債総額}}{\text{自己資本}} \times 100$

X社=$\frac{225,000}{149,000}×100=151.0$(%)
Y社=$\frac{160,000}{247,000}×100=64.7$(%)

配当性向

配当性向(Dividend Payout Ratio)とは、企業が得た利益のうち、どれだけを株主に配当として還元しているかを示す指標である。

計算式
配当性向(%) = $\left( \frac{\text{1株あたり配当金}}{\text{1株あたり当期純利益(EPS)}} \right) \times 100$
または、
配当性向(% = $\left( \frac{\text{配当総額}}{\text{当期純利益}} \right) \times 100$

ポイント
高い配当性向:利益の多くを株主に還元している。安定した企業や成熟企業に多い。
低い配当性向:利益を内部留保し、将来の成長投資に回している可能性がある。成長企業に多い。

目安

配当性向意味・特徴
0〜30%成長重視。配当よりも投資に資金を回す。
30〜50%バランス型。配当と成長投資の両立。
50%以上株主還元重視。成熟企業に多い。

投資家にとっての配当性向の意味
安定配当を重視する投資家にとっては、配当性向が高い企業が魅力的。
成長性を重視する投資家にとっては、配当性向が低くても将来の株価上昇が期待できる企業が魅力的。

〈配当性向〉
X社=$\frac{3,200}{10,300}×100 =31.07$(%)
Y社=$\frac{10000}{23,000}×100 =43.48$(%)

《問55》

損益分岐点比率とは?

損益分岐点比率は、企業の売上高のうち、損益分岐点(利益がゼロになる売上高)に達する割合を示す指標である。
この比率が低いほど、企業は少ない売上で利益を出せる構造になっているといえる。

計算式

$\text{損益分岐点比率} = \frac{\text{損益分岐点売上高}}{\text{売上高}} \times 100$

損益分岐点比率=$\frac{損益分岐点売上高}{売上高}$
損益分岐点売上高=$\frac{固定費}{限界利益率}$
限界利益率 = $\frac{売上総利益}{売上高}$
固定費= 売上総利益 − 営業利益

損益分岐点売上高は以下で求める。

$\text{損益分岐点売上高} = \frac{\text{固定費}}{\text{限界利益率}}$
限界利益率= $\frac{売上総利益}{売上高}$
固定費 = 売上総利益 − 営業利益

計算過程(小数点以下第3位を四捨五入)

X社

  • 売上高:276,000
  • 売上総利益:123,000
  • 営業利益:16,000
  • 限界利益率:$\frac{123,000}{ 276,000}$ =0.4457
  • 固定費:123,000 − 16,000 = 107,000
  • 損益分岐点売上高:$\frac{107,000}{0.4457}$ = 240,071.797
  • 損益分岐点比率:$\frac{240,071.797}{276,000}$ × 100 =86.98%

Y社

  • 売上高:310,000
  • 売上総利益:124,000
  • 営業利益:23,000
  • 限界利益率:124,000 ÷ 310,000 = 0.4
  • 固定費:124,000 − 23,000 = 101,000
  • 損益分岐点売上高:$\frac{101,000}{0.4}$ = 252,500.0
  • 損益分岐点比率:$\frac{252,500}{310,000}$ × 100 = 81.45%

結果(小数点以下第2位まで)

企業損益分岐点比率
X社86.98%
Y社81.45%

まとめ

  • Y社の損益分岐点比率の方が低く、利益を出しやすい構造になっている。
  • X社は売上の約87%を超えないと利益が出ないのに対し、Y社は81.45%で済む。

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