FP1級の過去問を解こう(2024年1月)法人税「略式別表四」

法人税 FP

今回のテーマは、法人税の「略式別表四」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年1月28日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年1月28日実施)【第3問】

《設 例》

製造業を営むX株式会社(資本金30,000千円、青色申告法人、同族会社かつ非上場会社で株主はすべて個人、租税特別措置法上の中小企業者等に該当し、適用除外事業者ではない。以下、「X社」という)の2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日。以下、「当期」という)における法人税の確定申告に係る資料は、以下のとおりである。
〈X社の当期における法人税の確定申告に係る資料〉
1.役員給与に関する事項
当期において、代表取締役であるAさんが所有する時価11,000千円の土地を11,900千円で買い取った。なお、X社は、この土地の売買に係る事前確定届出給与に関する届出書は提出していない。
2.交際費等に関する事項
当期における交際費等の金額は20,700千円で、全額を損金経理により支出している。このうち、参加者1人当たり5千円以下の飲食費が700千円含まれており、その飲食費を除いた接待飲食費に該当するものが18,000千円含まれている(いずれも得意先との会食によるもので、専ら社内の者同士で行うものは含まれておらず、所定の事項を記載した書類も保存されている)。その他のものは、すべて税法上の交際費等に該当する。
3.修繕費に関する事項
当期の期末近くにおいて機械装置の大規模修繕を行い、12,000千円を修繕費として損金経理により支出しており、このうち、3,000千円は資本的支出に当たる。
この修繕について、前期末決算において修繕引当金を12,000千円計上し、〈別表四(所得の金額の計算に関する明細書)〉において申告調整しており、当期の決算ではこの引当金の修繕引当金戻入を収益として計上した。
4.税額控除に関する事項
当期における「事業適応設備を取得した場合等の特別償却又は法人税額の特別控除」(以下、「デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制」という)に係る税額控除額が120千円ある。
5.「法人税、住民税及び事業税」等に関する事項
(1) 損益計算書に表示されている「法人税、住民税及び事業税」は、預金の利子について源泉徴収された所得税額40千円・復興特別所得税額840円および当期確定申告分の見積納税額9,840千円の合計額9,880,840円である。なお、貸借対照表に表示されている「未払法人税等」の金額は9,840千円である。
(2) 当期中に「未払法人税等」を取り崩して納付した前期確定申告分の事業税(特別法人事業税を含む)は860千円である。
(3) 源泉徴収された所得税額および復興特別所得税額は、当期の法人税額から控除することを選択する。
(4) 中間申告および中間納税については、考慮しないものとする。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

《問57》 《設例》のX社の当期の〈資料〉と下記の〈条件〉に基づき、同社に係る〈略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)〉の空欄①~⑦に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、別表中の「***」は、問題の性質上、伏せてある。
〈条件〉
・設例に示されている数値等以外の事項については考慮しないものとする。
・所得の金額の計算上、選択すべき複数の方法がある場合は、所得の金額が最も低くなる方法を選択すること。
・資本的支出に係る減価償却は考慮しなくてよい。

一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年1月28日実施)一部改変

正解 ① 9,840,000(円) ② 900,000(円) ③ 11,000,000(円)
④ 3,000,000(円) ⑤ 12,000,000(円) ⑥ 40,840(円)
⑦ 47,000,000(円)

問題は、2023年10月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は執筆日現在施行されている法令等に基づいて執筆する。

法人税の計算の手順

法人税の課税標準である所得金額は、「益金の額」から「損金の額」を控除して求める。企業会計上の利益(損益計算書の当期純利益)は「収益の額」から「費用の額」を控除して求める。

「収益と益金」、「費用と損金」は同じものも多いが、異なるものもある。
その違いを調整して法人税の所得金額を算出する。これを「申告調整」という。
実務では、法人税申告書「別表四」で計算する。

法人税法上の所得と企業会計上の利益

(法人税法上)
課税所得金額 = 益金 ー 損金

(企業会計上)
企業上の利益額 = 収益 ー 費用

※ 益金と収益、損金と費用は一致していないので、調整が必要となる。

当期利益
加算損金不算入(費用に計上しているが、損金に計上しないもの)
益金算入(収益に計上していないが、益金に計上するもの)
減算益金不算入(収益に計上しているが、益金に計上しないもの)
損金算入(費用に計上していないが、損金に計上するもの)
所得金額

① 損金処理した納税充当金
決算時点で金額が確定していない租税公課を「未払法人税等」として引き当てたものは、法人税法では損金不算入となるので、「損金処理した納税充当金」として加算する。
したがって、9,840,000(円)となる。

② 役員給与の損金不算入額
役員給与のうち、「定期同額給与」、「事前確定届出給与」、「業績連動給与」のいずれかに該当するものは、損金算入される。ただし、いずれかに該当しても、不相当に高額な部分の金額は損金算入されない。
Aさんが所有する時価11,000千円の土地をX社が11,900千円で買い取っており、差額900,000円が役員給与として扱われ、定期同額給与に該当しないことから、損金不算入となるため加算する。
したがって、900,000(円)となる。

③ 交際費等の損金不算入額
以下のものは、交際費等に含まれない。

  • 1人あたり、5,000円以下の得意先等との接待飲食費
  • 専ら従業員のために行われる社員旅行等のために通常要する費用
損金不算入額の計算
期末資本金損金算入限度額
1億円以下(中小企業)次の①、②のうちいずれか多い額まで
①年800万円(定額控除限度額)
②接待飲食費の50%
1億円超 100億円以下接待飲食費の50%
100億円超損金算入できない

設問では、接待飲食費が18,000千円であり、その50%である900万円と定額控除限度額である800万円を比べて、多い方の900万円が損金算入限度額となる。

したがって、20,700千円ー700千円ー9,000千円=1,100千円となる。→11,000,000(円)

④ 資本的支出の部分は、減価償却していくことになるため、全額を損金とすることはできない。
なお、〈条件〉のおいて、「資本的支出に係る減価償却は考慮しなくてよい」ため、
3,000,000(円)となる。

⑤ 修繕引当金については、税法上は、損益計上は一切認められない。
したがって、12,000,000(円)は益金不算入額となる。

⑥ 法人税額から控除される所得税額(復興特別所得税を含む)
源泉徴収された所得税額および復興特別所得税額は、当期の法人税額からの控除を選択するため、合計額を加算する。
したがって、40千円+840円=40,840円 となる。

⑦ 所得金額または欠損金額
加算項目の小計は、24,740,000円、減算項目の小計は、12,860,000円。
したがって、35,079,160+24,740,000-12,860,000+40,840-0=47,000,000(円)となる。

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