FP1級の過去問を解こう(2024年9月)「遺族厚生年金」

FP

今回のテーマは、「遺族厚生年金」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年9月8日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年9月8日実施)【第1問】

【第1問】 次の設例に基づいて、《問53》に答えなさい。
《設 例》
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(65歳)は、妻Bさん(65歳)との2人暮らしである。X社は65歳定年制(定年年齢に達した日の属する月の末日が退職日)を採用しているが、最長で70歳まで勤務することができる再雇用制度が設けられており、Aさんは、その制度を利用して70歳までX社に勤務する予定である。
Aさんは、先日行われた会社の健康診断において要再検査と判定されたことや65歳という節目の年であることを受け、自分が入院等をした場合に健康保険からどのような給付を受けられるのか詳しく知りたいと思っている。また、自分に介護が必要となった場合における公的介護保険に関する手続や、自分が死亡した場合に妻Bさんに支給される公的年金制度の遺族給付についても知りたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
Aさんとその家族に関する資料は、以下のとおりである。
〈Aさんとその家族に関する資料〉
(1) Aさん(本人)
・1959年9月3日生まれ
・公的年金の加入歴
1979年9月から1982年3月までの大学生であった期間(31月)は国民年金に任意加入していない。
1982年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である(厚生年金基金の加入期間はない)。
・全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
・1982年4月から現在に至るまで雇用保険の被保険者である。
(2) Bさん(妻)
・1959年6月21日生まれ
・公的年金の加入歴
1979年6月から1982年3月までの大学生であった期間(34月)は国民年金に任意加入し、保険料を納付している(付加保険料は納付していない)。
1982年4月から2019年6月まで厚生年金保険の被保険者である(厚生年金基金の加入期間はない)。
・全国健康保険協会管掌健康保険の被扶養者である。
※妻Bさんは、Aさんと同居し、Aさんによって生計を維持されているものとする。
※Aさんと妻Bさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
《問53》 Aさんが現時点(2024年9月8日)で死亡し、妻Bさんが遺族厚生年金の受給権を取得した場合、Aさんの死亡時における妻Bさんの遺族厚生年金について、遺族厚生年金として実際に支給される額(支給停止分が控除された後の額)を求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入すること。
なお、計算にあたっては、下記の〈条件〉に基づき、年金額は、2024年度価額に基づいて計算するものとする。
〈条件〉
(1) 厚生年金保険の被保険者期間
・総報酬制導入前の被保険者期間 : 252月
・総報酬制導入後の被保険者期間 : 257月
(2) 平均標準報酬月額および平均標準報酬額(2024年度再評価率による額)
・総報酬制導入前の平均標準報酬月額 : 300,000円
・総報酬制導入後の平均標準報酬額 : 580,000円
(3) 報酬比例部分の給付乗率
・総報酬制導入前の乗率 : 1,000分の7.125
・総報酬制導入後の乗率 : 1,000分の5.481
(4) 中高齢寡婦加算額
612,000円(要件を満たしている場合のみ加算すること)
(5) 妻Bさんの年金額
(65歳到達時点、2024年度価額)
・老齢厚生年金
基本年金額(報酬比例部分の額+経過的加算額): 900,000円
・老齢基礎年金の額
: 816,000円

一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>【第1問】(2024年9月8日実施)

正解:227,824(円)

前提知識
遺族厚生年金は、65歳以上の遺族が老齢厚生年金(報酬比例部分)を受給している場合、一定の調整(支給停止)が行われる。これは「年金の合算限度額」を超えないようにするための制度である。
なお、年金の合算限度額とは、年金の公平な支給を保つための調整基準である。

Aさんの報酬比例部分から算出される遺族厚生年金額は、
(300,000 円×($\frac{7.125}{1,000}$) ×252 月+580,000 円×($\frac{5.481}{1,000}$) ×257月)×$\frac{3}{4}$=1,016,736 円(円未満四捨五入)

​これは、支給停止調整前の遺族厚生年金額である。
※遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額となる。

遺族厚生年金の支給停止調整
 遺族厚生年金の3分の2+老齢厚生年金の2分の1

そして、この合算限度額から、Bさんが受給する老齢厚生年金(報酬比例部分の額+経過的加算額)を差し引くことで、実際に支給される遺族厚生年金額が求まる。

理由
65歳以上で遺族厚生年金と老齢厚生年金を受ける権利がある者は、自身の老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止となる。

中高齢寡婦加算の不適用
中高齢寡婦加算(612,000円)は、65歳未満の寡婦に対して適用される加算である。
Bさんは65歳到達済みのため、加算対象外となる。

(計算式
(300,000 円×($\frac{7.125}{1,000}$) ×252 月+580,000 円×($\frac{5.481}{1,000}$) ×257月)×$\frac{3}{4}$=1,016,736 円(円未満四捨五入)

1,016,736 円×$\frac{2}{3}$ +900,000 円×$\frac{1}{2}$ =1,127,824 円
1,127,824 円-900,000 円=227,824 円

(参考)(遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)日本年金機構

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