FP1級の過去問を解こう(2025年1月)法人税「略式別表四」

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今回のテーマは、法人税の「略式別表四」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2025年1月26日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2025年1月26日実施)【第3問】

【第3問】 次の設例に基づいて、下記の各問(《問57》~《問58》)に答えなさい。
《設 例》
製造業を営むX株式会社(資本金10,000千円、青色申告法人、同族会社かつ非上場会社で株主はすべて個人、租税特別措置法上の中小企業者等に該当し、適用除外事業者ではない。以下、「X社」という)の2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日。以下、「当期」という)における法人税の確定申告に係る資料は、以下のとおりである。
〈X社の当期における法人税の確定申告に係る資料〉
1.減価償却費に関する事項
当期における減価償却費は、その全額について損金経理を行っている。このうち、建物の減価償却費は8,000千円であるが、その償却限度額は7,500千円であった。一方、器具備品の減価償却費は2,500千円で、その償却限度額は2,800千円であった。
2.交際費等に関する事項
当期における交際費等の金額は10,000千円で、全額を損金経理により支出している。このうち、参加者1人当たり10千円以下の飲食費が500千円含まれており、その飲食費を除いた接待飲食費に該当するものが6,000千円含まれている(いずれも得意先との会食によるもので、専ら社内の者同士で行うものは含まれておらず、所定の事項を記載した書類も保存されている)。その他のものは、すべて税法上の交際費等に該当する。
3.受取配当金に関する事項
当期において、上場会社であるY社から、X社が前々期から保有しているY社株式に係る配当金600千円(源泉所得税控除前)を受け取った。なお、Y社株式は非支配目的株式等に該当する。
4.税額控除に関する事項
当期における「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」に係る税額控除額が300千円ある。
5.「法人税、住民税及び事業税」等に関する事項
(1) 損益計算書に表示されている「法人税、住民税及び事業税」は、預金の利子について源泉徴収された所得税額30千円・復興特別所得税額630円、受取配当金について源泉徴収された所得税額90千円・復興特別所得税額1,890円および当期確定申告分の見積納税額1,900千円の合計額2,022,520円である。なお、貸借対照表に表示されている「未払法人税等」の金額は1,900千円である。
(2) 当期中に「未払法人税等」を取り崩して納付した前期確定申告分の事業税(特別法人事業税を含む)は730千円である。
(3) 源泉徴収された所得税額および復興特別所得税額は、当期の法人税額から控除することを選択する。
(4) 中間申告および中間納税については、考慮しないものとする。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

《問57》 《設例》の〈X社の当期における法人税の確定申告に係る資料〉と下記の〈条件〉
に基づき、X社に係る〈略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)〉の空欄①~⑥に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、別表中の「***」は、問題の性質上、伏せてある。
〈条件〉
・《設例》に示されている数値等以外の事項については考慮しないものとする。
・所得の金額の計算上、選択すべき複数の方法がある場合は、所得の金額が最も低くなる方法を選択すること。

《問58》 前問《問57》を踏まえ、X社が当期の確定申告により納付すべき法人税額を求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は100円未満を切り捨てて円単位とすること。

一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2025年1月26日実施)一部改変

正解
《問57》
① 1,900,000(円) ② 500,000(円) ③ 1,500,000(円)④ 120,000(円)
⑤ 122,520(円) ⑥ 11,750,000(円)
《問58》
1,647,400(円)

《問57》
加算
①損金経理をした納税充当金
 1,900千円
(答)1,900,000円

②減価償却費
(建物)
 8,000千円-7,500千円=500千円
(答)500,000円

③交際費
10,000千円-500千円=9,500千円

6,000千円÷2=3,000千円<8,000千円
9,500千円ー8,000千円=1,500千円
(答)1,500,000円

資本金1億円以下の法人(中小法人等)
以下のいずれか有利な方を選択可能。
・定額控除限度額方式
 年間800万円(事業年度が12か月未満の場合は月割)を超える部分が損金不算入。
・定率控除方式
 飲食費等の50%を超える部分が損金不算入。

減算
④受取配当等の益金不算入額
600千円×20%=120千円
(答)120,000円

非支配目的株式等 不算入額:配当額 × 20%

⑤法人税額から控除される所得税額
預金の利子について源泉徴収された所得税額30,000円+復興特別所得税額630円+受取配当金
について源泉徴収された所得税額90,000千円+復興特別所得税額1,890円=122,520円
(答)122,520円

源泉所得税・復興税の控除額は別表五(一)などで控除されるが、
別表四上では、まず控除前の金額を反映させて「申告所得金額」を確定させる。

⑥ 所得金額又は欠損金額

当期利益:8,577,480円
加算:①~③の合計 → 1,900,000円 + 500,000円 + 1,500,000円 = 3,900,000円
減算:④ + 事業税等(730,000 円) = 120,000円 + 730,000円 = 850,000円
仮計:8,577,480円 + 3,900,000円 − 850,000円 = 11,627,480円
11,627,480円 + 122,520円 = 11,750,000円
(答)11,750,000(円)

《問58》

中小企業者(資本金1億円以下の普通法人)
所得区分税率
年800万円以下の部分15%(軽減税率)
年800万円超の部分23.2%(標準税率)

(控除項目)
税額控除(給与等支給増加による特別控除)300,000円
源泉徴収された所得税額(法人税額から控除)122,520円

8,000,000 円×15%+(11,750,000 円-8,000,000 円)×23.2%=2,070,000円
2,070,000 円-300,000 円-122,520 円
=1,647,400 円(100 円未満切捨て)

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