今回のテーマは、「不動産所得」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2025年5月25日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2025年5月25日実施)《問25》
《問25》 居住者に係る所得税の不動産所得に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
1) 賃貸人が、定期借地権の設定の際に賃借人から預託を受けた保証金(賃借人が返還請求権を有するもの)を定期預金に預け入れ、その利子を受け取った場合、当該利子は、不動産所得の金額の計算上、収入金額に算入される。
2) 賃貸人が、建物の賃貸借契約の際に賃借人から受け取った敷金(賃借人が返還請求権を有するもの)は、不動産所得の金額の計算上、原則として、その受け取った日が属する年分において収入金額に算入され、賃借人に返還する日が属する年分において必要経費に算入する。
3) 賃貸人が、所有する賃貸アパートの建物およびその敷地を譲渡するために、賃借人に支払う立退料は、不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入する。
4) 賃貸人が、所有する賃貸アパートを取り壊したことにより生じた損失の金額は、不動産の貸付が事業的規模に満たない場合、不動産所得の金額の計算上、その損失の金額を控除する前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入することができる。
正解:4
この問題は、「不動産所得」に関する所得税の取扱いについての知識を問うものである。
それでは、各肢を検討していこう。
1❌ 誤り
- この利子は「利子所得」に該当する。
- 不動産所得ではなく、「利子所得」として総合課税または申告分離課税の対象になる。
- 不動産所得に直接関係のない資産(預金)から得た収入は、原則として不動産所得には含まれない。
2❌ 誤り
- 返還義務のある敷金は、預かり金の性質であるため、収入金額には算入しない。
- 賃借人に返還しないと決まった場合や、契約終了時に違約金として受け取る場合などは収入になるが、通常の敷金は対象外。
- したがって、「収入金額に算入する」という記述は原則に反しているため誤り。
3❌ 誤り
- 立退料は「譲渡のために支出」された費用なので、不動産所得ではなく「譲渡所得」の計算上の取得費や譲渡費用に含まれる。
- この費用を「不動産所得の必要経費にする」のは不適切。
4✅ 正しい
- 事業的規模に満たない場合(いわゆる「5棟10室基準」未満)でも、建物の取壊しによって発生する未償却残高(帳簿上の価値の残り)は、その年の不動産所得の範囲内で必要経費に算入できる。
- ただし、不動産所得がマイナスにならないよう、「損失の金額を控除する前の所得額を限度」とする制限がある。
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