今回のテーマは、法人税の「略式別表四」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2025年5月25日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2025年5月25日実施)【第3問】
《設 例》
製造業を営むX株式会社(資本金10,000千円、青色申告法人、同族会社かつ非上場会社で株主はすべて個人、租税特別措置法上の中小企業者等に該当し、適用除外事業者ではない。以下、「X社」という)の2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日。以下、「当期」という)における法人税の確定申告に係る資料は、以下のとおりである。
〈X社の当期における法人税の確定申告に係る資料〉
1.減価償却費に関する事項
当期における減価償却費は、その全額について損金経理を行っている。このうち、器具備品の減価償却費は2,000千円であるが、その償却限度額は1,800千円であった。一方、建物の減価償却費は4,500千円で、その償却限度額は4,800千円であった。なお、当該建物について前期からの繰越償却超過額が500千円ある。
2.役員給与に関する事項
当期において、代表取締役であるAさんが所有する時価20,000千円(取得価額23,000千円)の土地を25,000千円で買い取った。なお、X社は、この土地の売買に係る事前確定届出給与に関する届出書は提出していない。
3.交際費等に関する事項
当期における交際費等の金額は19,700千円で、全額を損金経理により支出している。このうち、参加者1人当たり10千円以下の飲食費が1,200千円含まれており、その飲食費を除いた接待飲食費に該当するものが16,800千円含まれている(いずれも得意先との会食によるもので、専ら社内の者同士で行うものは含まれておらず、所定の事項を記載した書類も保存されている)。その他のものは、すべて税法上の交際費等に該当する。
4.税額控除に関する事項
当期における「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」に係る税額控除額が280千円ある。
5.「法人税、住民税及び事業税」等に関する事項
(1) 損益計算書に表示されている「法人税、住民税及び事業税」は、預金の利子について源泉徴収された所得税額40千円・復興特別所得税額840円および当期確定申告分の見積納税額6,500千円の合計額6,540,840円である。なお、貸借対照表に表示されている「未払法人税等」の金額は6,500千円である。
(2) 当期中に「未払法人税等」を取り崩して納付した前期確定申告分の事業税(特別法人事業税を含む)は1,220千円である。
(3) 源泉徴収された所得税額および復興特別所得税額は、当期の法人税額から控除することを選択する。
(4) 中間申告および中間納税については、考慮しないものとする。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

《問57》 《設例》の〈X社の当期における法人税の確定申告に係る資料〉と下記の〈条件〉に
基づき、X社に係る〈略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)〉の空欄①~⑦
に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、別表中の「***」は、問
題の性質上、伏せてある。
〈条件〉
・設例に示されている数値等以外の事項については考慮しないものとする。
・所得の金額の計算上、選択すべき複数の方法がある場合は、所得の金額が最も低く
なる方法を選択すること。
《問58》 前問《問57》を踏まえ、X社が当期の確定申告により納付すべき法人税額を求めな
さい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は100円未満を切り捨てて円単位とすること。

一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2025年5月25日実施)一部改変
(正解)
《問57》 ① 6,500,000(円) ② 200,000(円) ③ 5,000,000(円)
④ 10,100,000(円) ⑤ 300,000(円) ⑥ 40,840(円)⑦ 37,500,000(円)
《問58》7,723,100(円)
《問57》
(加算)
①損金経理をした納税充当金
「確定申告に係る資料」に表示されている「未払法人税等」の金額は6,500千円である。
会計上は「法人税等」を費用として処理し、未払分を「未払法人税等」として貸借対照表に表示。
税務上は、法人税等は損金不算入なので、別表四で加算調整(6,500千円)を行う。
したがって、6,500,000円
②減価償却の償却超過額
器具備品2,000千円-1,800千円=200千円
建物は範囲内
∴200千円
したがって、200,000円
③役員給与の損金不算入額
25,000千円-20,000千円=5,000千円
したがって、5,000,000円
法人が役員から資産(この場合は土地)を購入する際に、時価を超える金額で購入した場合、
その超過部分は役員に対する経済的利益の供与とみなされる。
これは、法人が役員に対して「時価以上の対価を支払うことで利益を与えた」と評価されるためである。
したがって、法人税法上は「時価」と「実際の支払額」の差額が損金不算入の対象になる。
④交際費等の損金不算入額
以下のような支出は交際費等から除外される。(損金算入可能)
・従業員慰安のための運動会・旅行など
・1人当たり10,000円以下の飲食費(一定の書類保存が条件)
・会議に伴う茶菓・弁当などの軽飲食費
・カレンダーや手帳などの贈答品費用
資本金1億円以下の法人(中小法人)
以下のいずれか少ない方の金額が損金不算入額となる。
・接待飲食費の50%を超える部分
・定額控除限度額(年間800万円)を超える部分
※定額控除限度額は、事業年度の月数に応じて按分する。
「設例」より
当期における交際費等の金額は19,700千円で、全額を損金経理により支出している。
このうち、参加者1人当たり10千円以下の飲食費が1,200千円含まれており、
その飲食費を除いた接待飲食費に該当するものが16,800千円含まれている(いずれも得意先との会食によるもので、専ら社内の者同士で行うものは含まれておらず、所定の事項を記載した書類も保存されている)。
先ずは、損金算入可能額を計算する。
損金算入可能な飲食費(10千円以下)
1,200千円(全額損金算入)
接待飲食費の50%損金算入
16,800 × 50% = 8,400千円>8,000千円
損金算入可能額の合計
→ 1,200千円 + 8,400千円 = 9,600千円
損金不算入額(加算調整)
→ 19,700千円 − 9,600千円 = 10,100千円
したがって、10,100,000円
※法的根拠と取扱いのポイント
(1)交際費等からの除外(租税特別措置法 第61条の4 第3項 第4号)
以下の要件をすべて満たす場合、その飲食費は「交際費等」に該当しないとされる。
・飲食等の費用であること
・1人当たりの金額が 10,000円(税抜)以下 であること
・得意先など社外の者との飲食であること
・所定の事項(日時、参加者、金額、場所など)を記載した書類を保存していること
(2)損金算入の可否
上記の要件を満たす場合、その飲食費は「交際費等」ではなく、通常の販売費及び一般管理費として損金算入が可能である。
つまり、交際費の損金算入限度額(800万円や50%ルール)とは無関係に、全額損金にできるということ。
(減算)
⑤減価償却超過額の当期認容額
(建物)
償却限度額は4,800千円-4,500千円=300千円
前期からの繰越償却超過額が500千円
∴300千円
したがって、300,000円
前期からの「償却しすぎた分(500千円)」は、すぐには認められない。
でも、今年に償却限度額に余裕があれば、その余裕分は認めてもらえる。
今年は限度額に対して300千円の余裕があるので、その分だけ認容される。
残りの200千円は、次期以降に持ち越しとなる。
⑥法人税額から控除される所得税額
預金の利子について源泉徴収された所得税額40千円+復興特別所得税額840円=40,840円
したがって、40,840円
当期利益の額 17,179,160円
(加算)
①6,500,000円
②200,000円
③5,000,000円
④10,100,000円
(減算)
⑤300,000円
納税充当金から支出した事業税等の金額 1,220,000
⑥40,840円
⑦ 所得金額又は欠損金額
当期利益:17,179,160円
加算:①~④の合計 → 6,500,000 + 200,000 + 5,000,000 + 10,100,000 = 21,800,000円
減算:⑤ + 事業税等(1,220,000円) = 300,000 + 1,220,000 = 1,520,000円
仮計:17,179,160 + 21,800,000 − 1,520,000 = 37,459,160円
所得税控除後:37,459,160 − 40,840 ≒ 37,418,320円
→ 四捨五入で 37,500,000円
所得金額又は欠損金額
37,500,000円
《問58》
8,000,000 円×15%+(37,500,000 円-8,000,000 円)×23.2%=8,044,000円
8,044,000 円-280,000 円-40,840 円=7,723,100円(100 円未満切捨て)
コメント