今回のテーマは、「上場株式と公募株式投資信託への投資」である。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2025年5月25日実施)【第2問】
《設 例》
Aさん(30歳)は、上場株式と公募株式投資信託への投資を行いたいと考えている。
Aさんは、上場株式についてはX社株式(東京証券取引所上場銘柄)に興味を持ち、公募株式投資信託については投資信託Yと投資信託Zの購入を考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。


《問54》 《設例》の〈X社の財務データ〉に基づいて、Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~⑤に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、計算結果は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。

《問56》 《設例》の〈投資信託Y・投資信託Zの予想収益率〉に基づいて、次の①および②に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。
① 投資信託Yと投資信託Zを6:4の割合で組み入れたポートフォリオの期待収益率はいくらか。
② 投資信託Yと投資信託Zを6:4の割合で組み入れたポートフォリオの標準偏差はいくらか。
一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>【第2問】(2025年5月25日実施)改題
正解
《問54》 ① 8.24(%) ② 6.18(%) ③ 376.36(%) ④ 34.46(%)⑤ 162.66(倍)
《問56》 ① 6.60(%)② 6.16(%)
《問54》
①ROE
(ROEの計算式)
$\frac{当期純利益}{自己資本}×100$%
自己資本(株主資本合計+その他の包括利益累計額合計)
$\frac{37,080}{(426,200+23,800)}×100=8.24$%
②サスティナブル成長率
(サスティナブル成長率の計算式)
サステイナブル成長率(%) = ROE × 内部留保率
0.0824 ×0.75×100 =6.18(%)
内部留保率=1-配当性向
配当性向(%)=$\frac{配当金支払総額}{当期純利益}×100$
$\frac{9,270}{37,080}$=0.25×100=25%
③流動比率
流動比率=$\frac{流動資産}{流動負債}×100$
$\frac{414,000}{110,000}×100=376.36$(%)
④固定長期適合率
固定長期適合率の計算式は以下の通りである。
固定長期適合率(%)
$\text{固定長期適合率} = \frac{\text{固定資産}}{\text{自己資本} + \text{固定負債}} \times 100$
この指標は、企業が保有する固定資産が、自己資本と固定負債という「長期安定資金」でどれだけ賄われているかを示す。
固定資産:159,200百万円
自己資本:450,000百万円
固定負債:12,000百万円
計算
$\frac{159,200百万円}{450,000百万円 + 12,000百万円} \times 100 = 34.46$(%)
(目安)
100%以下:健全な状態(固定資産が長期資金で賄われている)
100%超:要注意(短期資金で固定資産を賄っている可能性がある)
120%以上:改善が必要
150%以上:財務の安全性に問題がある可能性あり
⑤インタレスト・カバレッジ・レシオ
インタレスト・カバレッジ・レシオ(Interest Coverage Ratio)は、企業が利息の支払い能力をどれだけ持っているかを示す財務指標である。
(インタレスト・カバレッジ・レシオの計算式)
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)=$\frac{事業利益}{金融費用}$
※事業利益=営業利益+受取利息及び受取配当+有価証券利息+持分法による投資利益
※金融費用=支払利息および割引料+社債利息
事業利益は、 51,200百万円+350百万円+500百万円=52,050百万円
金融費用は、 320百万円
$\frac{52,050百万円}{320百万円} = 162.66$(倍)
《問56》
① ポートフォリオの期待収益率
ポートフォリオの各シナリオの収益率 = 0.6 × Yの収益率 + 0.4 × Zの収益率
シナリオ | 収益率Y | 収益率Z | ポートフォリオ収益率 |
---|---|---|---|
1 | 12% | 8% | 0.6×12 + 0.4×8 = 10.4% |
2 | 6% | 12% | 0.6×6 + 0.4×12 = 8.4% |
3 | -4% | -8% | 0.6×(-4) + 0.4×(-8) = -5.6% |
期待収益率の計算(加重平均)
E(R)=0.5×10.4+0.3×8.4+0.2×(−5.6)=5.2+2.52−1.12=6.6$
※E( )は期待値Expected Valueで、Rは収益率returnのこと。
② ポートフォリオの標準偏差
標準偏差は、以下の手順で求める。
1. 各シナリオの「収益率の偏差² × 確率」を計算する。
偏差 = そのシナリオの収益率 − 期待収益率(6.6%)
シナリオ | 収益率 | 偏差 | 偏差² | 偏差²×確率 |
---|---|---|---|---|
1 | 10.4% | 3.8%(0.038) | 0.001444 | 0.000722 |
2 | 8.4% | 1.8%(0.018) | 0.000324 | 0.0000972 |
3 | -5.6% | -12.2%(-0.122) | 0.014884 | 0.0029768 |
(参考)電卓での2乗の打ち方
2²なら
「2」を押す。
「×」を押す。
「=」を押す。
「4」と表示される。
2. 分散(variance)= 偏差²×確率の合計
0.000722+0.0000972+0.0029768=0.003796
標準偏差
[ $\sigma = \sqrt{0.003796} \approx 6.16$% ]
結果
- 期待収益率:6.60%
- 標準偏差:6.16%
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