今回のテーマは、「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」である。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2022年5月22日実施)《問40》
《問40》 「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」(以下、「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、各選択肢において、ほかに必要とされる要件等はすべて満たしているものとする。
1) 被相続人の居住用家屋およびその敷地(地積500㎡、時価1億5,000万円)を相続により取得した被相続人の子が、居住用家屋を取り壊して敷地を2つに分筆(各250㎡)し、一方の敷地を7,500万円で譲渡し、残りの敷地を事業用借地権により賃貸した場合、その譲渡について、子は本特例の適用を受けることができない。
2) 被相続人が生前に有料老人ホームに入居したため、被相続人の居住の用に供されなくなっていた家屋およびその敷地を被相続人の子が相続により取得して譲渡した場合、被相続人が有料老人ホームの入居時に介護保険法に規定する要介護認定または要支援認定を受けていなければ、その家屋は被相続人居住用家屋に該当せず、子は本特例の適用を受けることができない。
3) 被相続人の居住用家屋およびその敷地を被相続人の子が相続により取得して譲渡した場合、譲渡の前年において、その子が自己の居住用財産について「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」の適用を受けている場合であっても、子は本特例の適用を受けることができる。
4) 被相続人の居住用家屋およびその敷地を被相続人の子が相続により取得して譲渡した場合において、子が本特例の適用を受けるためには、確定申告書に譲渡資産の所在地を管轄する市町村長または特別区長から交付を受けた被相続人居住用家屋等確認書を添付する必要がある。
一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2022年5月22日実施)
正解:1
それでは、問題を検討していこう。
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例
相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売って、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる。
なお、令和6年1月1日以後に行う譲渡で被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は2,000万円までとなる。
(No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)国税庁Webサイトより
1 誤り。
本特例の適用要件に、「売却代金が1億円以下であること」がある。
この特例の適用を受ける被相続人居住用家屋と一体として利用していた部分を別途分割して売却している場合や他の相続人が売却している場合における1億円以下であるかどうかの判定は、相続の時からこの特例の適用を受けて被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を売却した日から3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に分割して売却した部分や他の相続人が売却した部分も含めた売却代金により行う。
(No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)国税庁Webサイトより
したがって、譲渡した部分の譲渡対価が1億円以下であればよい。
2 正しい。
被相続人が生前に有料老人ホームに入居したため、被相続人の居住の用に供されなくなっていた家屋およびその敷地を被相続人の子が相続により取得して譲渡した場合、被相続人が有料老人ホームの入居時に介護保険法に規定する要介護認定または要支援認定を受けていなければ、その家屋は被相続人居住用家屋に該当せず、子は本特例の適用を受けることができない。
3 正しい。
被相続人の居住用家屋およびその敷地を被相続人の子が相続により取得して譲渡した場合、譲渡の前年において、その子が自己の居住用財産について「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」の適用を受けている場合であっても、子は本特例の適用を受けることができる。
ただし、同年中に、本特例と「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」を併用する場合は、特別控除の合計は3,000万円が上限となる。
なお、本特例と「相続税の取得費加算の特例」は併用できない。
4 正しい。
被相続人の居住用家屋およびその敷地を被相続人の子が相続により取得して譲渡した場合において、子が本特例の適用を受けるためには、確定申告書に譲渡資産の所在地を管轄する市町村長または特別区長から交付を受けた被相続人居住用家屋等確認書を添付する必要がある。
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