今回のテーマは、「保険業法・金融庁の「保険会社向けの総合的な監督指針」」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2024年1月28日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2024年1月28日実施)《問9》
《問9》 保険業法および金融庁の「保険会社向けの総合的な監督指針」に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
1) 書面の交付またはこれに代替する電磁的方法により、顧客に情報の提供を行うにあたって、同一媒体を用いて一体で「契約概要」および「注意喚起情報」を記載する場合、それぞれに記載すべき内容を明瞭に区分して表示しなければならない。
2) 保険期間が1カ月以内であり、かつ、被保険者が負担する保険料の額が1,000円以下である保険契約の募集においては、顧客の意向の把握を要しない。
3) 特定保険契約の募集に際しては、加入の動機やニーズ、資産、収入等の財産の状況だけでなく、投資性金融商品の購入経験の有無およびその種類等、顧客の属性等の的確な把握を行うことが求められる。
4) 保険会社においては、「自然災害」「営業上のトラブル」「人事上のトラブル」等に加え、口コミ、インターネット等による「風評」による危機に対しても危機管理マニュアルの策定が求められる。
一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2024年1月28日実施)
正解:1
それでは、問題を検討していこう。
なお、問題は、特に指示のない限り、2023年10月1日現在施行の法令等に基づいて出願されているが、正解及び解説は、執筆時点の法令等に基づいて執筆する。
1 誤り。
「契約概要」と「注意喚起情報」について、同一媒体を用いて一体で記載している場合には、以下のア.(ア)及びイ.(ア)について省略したうえで、当該情報を「契約情報」として表示することで足りる。
ア. 「契約概要」の項目
(ア)当該情報が「契約概要」であること。
イ. 「注意喚起情報」の項目
(ア)当該情報が「注意喚起情報」であること。
保険会社向けの総合的な監督指針 令和6年2月(金融庁Webサイト)
したがって、それぞれに記載すべき内容を明瞭に区分して表示しなければならないわけではない。
2 正しい。
(顧客の意向の把握等)
第294条の2 保険会社等若しくは外国保険会社等、これらの役員(保険募集人である者を除く。)、保険募集人又は保険仲立人若しくはその役員若しくは使用人は、保険契約の締結、保険募集又は自らが締結した若しくは保険募集を行った団体保険に係る保険契約に加入することを勧誘する行為その他の当該保険契約に加入させるための行為に関し、顧客の意向を把握し、これに沿った保険契約の締結等(保険契約の締結又は保険契約への加入をいう。以下この条において同じ。)の提案、当該保険契約の内容の説明及び保険契約の締結等に際しての顧客の意向と当該保険契約の内容が合致していることを顧客が確認する機会の提供を行わなければならない。ただし、保険契約者等の保護に欠けるおそれがないものとして内閣府令で定める場合は、この限りでない。
保険業法・e-Gov法令検索
(情報の提供)
第227条の2
(略)
9 法第294条第1項ただし書に規定する内閣府令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 次に掲げる保険契約を取り扱う場合(当該保険契約に係る保険契約者以外の者に対する情報の提供に係る場合に限る。)
イ 被保険者(保険契約者以外の者に限る。ロにおいて同じ。)が負担する保険料の額が零である保険契約
ロ 保険期間が1月以内であり、かつ、被保険者が負担する保険料の額が1,000円以下である保険契約
(略)
保険業法施行規則・e-Gov
3 正しい。
(2)顧客の属性等の的確な把握、効果的活用及びその管理の徹底
保険会社及び保険募集人は、特定保険契約の販売・勧誘にあたり、例えば以下の情報を顧客から収集しているか。また、保険会社及び保険募集人は、既契約者に対する新たな特定保険契約の販売・勧誘に際して、当該情報(アを除く。)が変化したことを把握した場合には、顧客に確認を取ったうえで、登録情報の変更を行うなど適切な顧客情報の管理をおこなっているか。
ア.生年月日(顧客が自然人の場合に限る。)
イ.職業(顧客が自然人の場合に限る。)
ウ.資産、収入等の財産の状況
エ.過去の金融商品取引契約(金融商品取引法第34条に規定する「金融商品取引契約」をいう。)の締結及びその他投資性金融商品の購入経験の有無及びその種類
オ.既に締結されている金融商品の満期金又は解約返戻金を特定保険契約の保険料に充てる場合は、当該金融商品の種類
カ.特定保険契約を締結する動機・目的、その他顧客のニーズに関する情報
保険会社向けの総合的な監督指針 令和6年2月(金融庁Webサイト)
(適合性の原則等)
第40条 金融商品取引業者等は、業務の運営の状況が次の各号のいずれかに該当することのないように、その業務を行わなければならない。
一 金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況及び金融商品取引契約を締結する目的に照らして不適当と認められる勧誘を行つて投資者の保護に欠けることとなつており、又は欠けることとなるおそれがあること。
二 前号に掲げるもののほか、業務に関して取得した顧客に関する情報の適正な取扱いを確保するための措置を講じていないと認められる状況、その他業務の運営の状況が公益に反し、又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがあるものとして内閣府令で定める状況にあること。
金融商品取引法・e-Gov法令検索
4 正しい。
危機管理マニュアルを策定しているか。また、危機管理マニュアルは、自らの業務の実態やリスク管理の状況等に応じ、不断の見直しが行われているか。なお、危機管理マニュアルの策定にあたっては、客観的な水準が判定されるものを根拠として設計されていることが望ましい。
(参考)想定される危機の事例
ア. 自然災害(地震、風水害、異常気象、伝染病等)
イ. テロ・戦争(国外において遭遇する場合も含む。)
ウ. 事故(大規模停電、コンピュータ事故等)
エ. 風評(口コミ、インターネット、電子メール、憶測記事等)
オ. 対企業犯罪(脅迫、反社会的勢力の介入、データ盗難、役職員の誘拐等)
カ. 営業上のトラブル(苦情・相談対応、データ入力ミス等)
キ. 人事上のトラブル(役職員の事故・犯罪、内紛、セクシャルハラスメント等)
ク. 労務上のトラブル(内部告発、過労死、職業病、人材流出等)
保険会社向けの総合的な監督指針 令和6年2月(金融庁Webサイト)
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