今回のテーマは、「法人における生命保険の経理処理」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2024年1月28日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2024年1月28日実施)《問12》
《問12》 契約者(=保険料負担者)を法人、被保険者を役員とする生命保険契約の保険料の経理処理に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、各選択肢において、保険契約は2019年7月8日以後に契約したもので、保険期間は3年以上あり、保険料は年払いかつ全期払いであるものとする。
1) 死亡保険金受取人を法人とする最高解約返戻率が70%超85%以下の定期保険に加入した場合、保険期間の当初6割相当期間において支払保険料の4割相当額を資産に計上する。
2) 死亡保険金受取人を法人とする最高解約返戻率が85%超の定期保険に加入した場合、保険期間の当初6割相当期間の経過後は、支払保険料の全額を損金の額に算入し、資産計上額を残存期間で均等に取り崩して損金の額に算入する。
3) 死亡保険金受取人を法人とする最高解約返戻率が50%超70%以下、1人の被保険者につき年換算保険料相当額が100万円の定期保険に加入した場合、支払保険料の全額を損金の額に算入する。
4) 死亡保険金受取人を被保険者の遺族、被保険者を特定の役員とする定期保険に加入した場合、支払保険料はその役員に対する給与となる。
一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2024年1月28日実施)
正解:4
それでは、問題を検討していこう。
なお、問題は、特に指示のない限り、2023年10月1日現在施行の法令等に基づいて出願されているが、正解及び解説は、執筆時点の法令等に基づいて執筆する。
定期保険等に係る保険料の取扱い(2019年7月8日以後の契約)
最高解約返戻率50%超70%以下
保険期間 | 40%期間 | 35%期間 | 25%期間 (75%期間経過後) |
---|---|---|---|
資産計上 損金算入 割合 | ・40%を資産計上 ・60%を損金算入 | 全額を損金算入 | ・全額を損金算入 ・資産計上額を残存期間で均等に取り崩し (損金算入) |
最高解約返戻率70%超85%以下
保険期間 | 40%期間 | 35%期間 | 25%期間 (75%期間経過後) |
---|---|---|---|
資産計上 損金算入 割合 | ・60%を資産計上 ・40%を損金算入 | 全額を損金算入 | ・全額を損金算入 ・資産計上額を残存期間で均等に取り崩し (損金算入) |
最高解約返戻率85%超
保険期間 | 最高解約返戻率(A)となる期間まで | Aとなる期間経過後から解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間まで | 解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間の経過後 |
---|---|---|---|
資産計上 損金算入 割合 | 1~10年目 ・A×90%を資産計上 ・残額を損金算入 11年目以降 ・A×70%を資産計上 ・残額を損金算入 | 全額を損金算入 | ・全額を損金算入 ・資産計上額を残存期間で均等に取り崩し(損金算入) |
なお、以下に該当する保険等は、期間の経過に応じて支払保険料の全額を損金算入する。
- 最高解約返戻率が50%以下の契約
- 最高解約返戻率が70%以下で、かつ年換算保険料相当額が30万円以下の契約
- 保険期間が3年未満の契約
1 誤り。
死亡保険金受取人を法人とする最高解約返戻率が70%超85%以下の定期保険に加入した場合、保険期間の当初4割相当期間において支払保険料の6割相当額を資産に計上する。
2 誤り。
死亡保険金受取人を法人とする最高解約返戻率が85%超の定期保険に加入した場合、解約返戻金相当額が最も高い金額となる期間の経過後は、支払保険料の全額を損金の額に算入し、資産計上額を残存期間で均等に取り崩して損金の額に算入する。
3 誤り。
死亡保険金受取人を法人とする最高解約返戻率が50%超70%以下、1人の被保険者につき年換算保険料相当額が100万円の定期保険に加入した場合、、保険期間の当初4割相当期間において支払保険料の4割相当額を資産に計上する。(原則通り)
なお、最高解約返戻率が70%以下で、かつ年換算保険料相当額が30万円以下の契約は、支払保険料の全額を損金算入できる。
4 正しい。
死亡保険金受取人を被保険者の遺族、被保険者を特定の役員とする定期保険に加入した場合、支払保険料はその役員に対する給与となる。
(使用者契約の定期保険に係る経済的利益)
36-31の2 使用者が、自己を契約者とし、役員又は使用人(これらの者の親族を含む。)を被保険者とする定期保険(一定期間内における被保険者の死亡を保険事故とする生命保険をいい、傷害特約等の特約が付されているものを含む。以下36-31の5までにおいて同じ。)に加入してその保険料を支払ったことにより当該役員又は使用人が受ける経済的利益(傷害特約等の特約に係る保険料の額に相当する金額を除く。)については、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次により取り扱うものとする。(昭63直法6-7、直所3-8追加)
(1) 死亡保険金の受取人が当該使用者である場合 当該役員又は使用人が受ける経済的利益はないものとする。
(2) 死亡保険金の受取人が被保険者の遺族である場合 当該役員又は使用人が受ける経済的利益はないものとする。ただし、役員又は特定の使用人(これらの者の親族を含む。)のみを被保険者としている場合には、当該保険料の額に相当する金額は、当該役員又は使用人に対する給与等とする。
所得税基本通達(注:アンダーライン等は筆者による)
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