今回のテーマは、「譲渡所得の課税の特例・建ぺい率・容積率」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年5月26日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年5月26日実施)【第4問】
【第4問】 次の設例に基づいて、下記の各問(《問60》~《問62》)に答えなさい。
《設 例》
Aさん(55歳)は、S市にある自宅(甲土地および甲土地上の戸建て住宅)と乙土地を8年前に父親の相続により取得している。現在、Aさんは自宅で妻と2人で暮らしているが、近々、自宅を売却し、息子夫婦が住むM市に住宅を購入する予定である。
また、乙土地は月極駐車場として使用しているが、収益性が低く、将来の相続時に相続税評価額が高くなることが予想されることから、乙土地上に賃貸マンションを建築して賃貸事業を開始することを検討している。
甲土地および乙土地の概要は、以下のとおりである。

(注)
・甲土地は252㎡の長方形の土地であり、乙土地は360㎡の長方形の土地である。
・幅員18mの公道は、建築基準法第52条第9項の特定道路であり、特定道路から甲土地および乙土地までの延長距離は42mである。
・幅員3mの公道は、建築基準法第42条第2項により特定行政庁の指定を受けた道路である。3m公道の道路中心線は、当該道路の中心部分にある。また、3m公道の甲土地および乙土地の反対側は宅地であり、がけ地や川等ではない。
・甲土地および乙土地は、建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地ではない。
・指定建蔽率および指定容積率とは、それぞれ都市計画において定められた数値である。
・特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
《問60》 宅地建物取引業法の媒介契約および「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」(以下、「本特例」という)に関する以下の文章の空欄①~⑦に入
る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、問題の性質上、明
らかにできない部分は「□□□」で示してある。
〈媒介契約〉
Ⅰ 「媒介契約の有効期間については、一般媒介契約では制限はありませんが、専任媒介契約および専属専任媒介契約では( ① )カ月を超えることができません。依頼者の申出により有効期間を更新する場合も、専任媒介契約および専属専任媒介契約では更新の時から( ① )カ月を超えることができません。
宅地建物取引業者による依頼者への業務の処理状況の報告については、一般媒介契約では報告義務はありませんが、専任媒介契約では( ② )週間に1回以上、専属専任媒介契約では□□□週間に1回以上報告しなければならないとされています。
( ③ )機構への物件情報の登録について、一般媒介契約では登録義務はありませんが、専任媒介契約および専属専任媒介契約では登録が義務付けられており、専任媒介契約ではその契約の締結の日から□□□日以内、専属専任媒介契約では( ④ )日以内に登録しなければならないとされています。
なお、いずれの媒介契約を締結した宅地建物取引業者であっても、当該媒介契約の目的物である宅地または建物の売買または交換の申込みがあった場合、遅滞なく、申込みがあった旨を依頼者に報告しなければならないとされています」
〈特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例〉
Ⅱ 「本特例は、居住用財産を買い換えた場合に、所定の要件を満たせば、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる特例です。2024年度税制改正により従来の仕組みのまま適用期限が延長されました。
Aさんが、居住の用に供している家屋とその敷地である甲土地を譲渡し、本特例の適用を受けるためには、家屋および甲土地について、譲渡する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものでなければならず、その譲渡に係る対価の額が( ⑤ )円以下でなければなりません。居住しなくなってから譲渡する場合は、居住しなくなった日から( ⑥ )年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡しなければなりません。
また、買換資産として取得する住宅は、居住の用に供する部分の床面積が( ⑦ )㎡以上でなければならず、住宅が新築である場合、エネルギーの使用の合理化に資する一定のものである必要があります」
《問61》 Aさんが、下記の〈譲渡資産および買換資産に関する資料〉に基づき、S市の自宅を売却してM市の住宅を取得した場合、次の①および②に答えなさい。〔計算過程〕を示
し、〈答〉は100円未満を切り捨てて円単位とすること。なお、本問の譲渡所得以外の所得や所得控除等は考慮しないものとする。
① 「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用を受けた場合の譲渡所得の金額に係る所得税および復興特別所得税、住民税の合計額はいくらか。
② 「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」および「居住用財産を譲渡した
場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用を受けた場合の譲渡所得の金額に係る所得税お
よび復興特別所得税、住民税の合計額はいくらか。

《問62》 乙土地に賃貸マンション(耐火建築物)を建築する場合、次の①および②に答えなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は㎡表示とすること。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
① 建蔽率の上限となる建築面積はいくらか。
② 容積率の上限となる延べ面積はいくらか。特定道路までの距離による容積率制限の緩和
を考慮すること。

《問60》
〈答〉 ① 3(カ月) ② 2(週間) ③ 指定流通(機構)④ 5(日) ⑤ 1億(円) ⑥ 3(年) ⑦ 50(㎡)
《問61》〈答〉 ① 4,596,200(円)〈答〉 ② 8,627,500(円)
《問62》〈答〉 ① 350(㎡) ② 1,764(㎡)
《問60》
〈媒介契約〉
Ⅰ 「媒介契約の有効期間については、一般媒介契約では制限はありませんが、専任媒介契約および専属専任媒介契約では( ①3 )カ月を超えることができません。依頼者の申出により有効期間を更新する場合も、専任媒介契約および専属専任媒介契約では更新の時から( ① )カ月を超えることができません。 宅地建物取引業者による依頼者への業務の処理状況の報告については、一般媒介契約では報告義務はありませんが、専任媒介契約では( ②2)週間に1回以上、専属専任媒介契約では□□□週間に1回以上報告しなければならないとされています。 ( ③ 指定流通)機構への物件情報の登録について、一般媒介契約では登録義務はありませんが、専任媒介契約および専属専任媒介契約では登録が義務付けられており、専任媒介契約ではその契約の締結の日から□□□日以内、専属専任媒介契約では( ④5 )日以内に登録しなければならないとされています。 なお、いずれの媒介契約を締結した宅地建物取引業者であっても、当該媒介契約の目的物である宅地または建物の売買または交換の申込みがあった場合、遅滞なく、申込みがあった旨を依頼者に報告しなければならないとされています」
〈特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例〉
Ⅱ 「本特例は、居住用財産を買い換えた場合に、所定の要件を満たせば、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができる特例です。2024年度税制改正により従来の仕組みのまま適用期限が延長されました。 Aさんが、居住の用に供している家屋とその敷地である甲土地を譲渡し、本特例の適用を受けるためには、家屋および甲土地について、譲渡する年の1月1日において所有期間が10年を超えるものでなければならず、その譲渡に係る対価の額が( ⑤1億 )円以下でなければなりません。居住しなくなってから譲渡する場合は、居住しなくなった日から( ⑥3 )年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡しなければなりません。 また、買換資産として取得する住宅は、居住の用に供する部分の床面積が( ⑦50 )㎡以上でなければならず、住宅が新築である場合、エネルギーの使用の合理化に資する一定のものである必要があります」
《問61》
① 「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用を受けた場合の譲渡所得の金額に係る所得税および復興特別所得税、住民税の合計額
100,000,000 円-75,000,000 円=25,000,000 円
25,000,000 円-(100,000,000 円×5%+4,500,000 円)×25,000,000 円/100,000,000 円25,000,000円-(5,000,000+4,500,000)×0.25
2,500-(500+450)×0.25
2,500-237.5=2,262.5
=22,625,000 円
譲渡所得=譲渡価額−(買換資産取得価額−(取得費+譲渡費用))×(譲渡価額−買換資産取得価額額)/譲渡価額
22,625,000 円×15%=3,393,750 円
3,393,750 円×2.1%=71,268.75 円
3,393,750 円+71,268.75 円=3,465,000 円(100 円未満切捨て)
22,625,000 円×5%=1,131,200 円(100 円未満切捨て)
3,465,000 円+1,131,200 円=4,596,200 円
〈答〉 ① 4,596,200(円)
② 「居住用財産を譲渡した場合の 3,000 万円の特別控除」および「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用を受けた場合の譲渡所得の金額に係る所得税および復興特別所得税、住民税の合計額
100,000,000 円-(100,000,000 円×5%+4,500,000 円)-30,000,000 円
=60,500,000 円
60,000,000 円×10%=6,000,000 円
6,000,000 円×2.1%=126,000 円
6,000,000 円+126,000 円=6,126,000 円
60,000,000 円×4%=2,400,000 円
6,126,000 円+2,400,000 円=8,526,000 円
(60,500,000 円-60,000,000 円)×15%=75,000 円
75,000 円×2.1%=1,575 円
75,000 円+1,575 円=76,500 円(100 円未満切捨て)
(60,500,000 円-60,000,000 円)×5%=25,000 円
76,500 円+25,000 円=101,500 円
8,526,000 円+101,500 円=8,627,500 円
〈答〉 ② 8,627,500(円)
6,000万円まで → 軽減税率
超過分(今回の場合は50万円)→ 通常税率
No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例
《問62》
① 建蔽率の上限となる建築面積はいくらか。
〈特定道路までの距離による容積率制限の緩和に関する計算式〉
W1=(a-W2)×(b-L)/b
W1 : 前面道路幅員に加算される数値
W2 : 前面道路の幅員(m)
L : 特定道路までの距離(m)
①確認するポイント(乙土地)
・防火地域に防火建築物+指定建蔽率80%→制限なし
・前面道路の幅員 6m→セットバック部分なし
・3m→0.5mセットバック部分あり
・建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地ではない。
17.5m×20m=350㎡
350㎡
② 容積率の上限となる延べ面積はいくらか。特定道路までの距離による容積率制限の緩和を考慮すること。
特定道路までの距離による容積率制限の緩和に関する計算式の適用
(12-6)×(70-42)/70
(6×28)/70=2.4
(6+2.4)×0.6×100%=504%<600%
350㎡×504%=1,764㎡
記号 | 意味 | 通常の設定値 | 理由 |
a | 緩和の上限幅員 | 12m | 建築基準法では、幅員12m以上の道路に接していれば 容積率制限を受けないため、それ未満の道路に対して緩和を適用する。 |
b | 緩和が適用される 距離の上限 | 70m | 特定道路からの距離が70m以内であることが緩和の条件。 |
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