FP1級の過去問を解こう(2024年9月)「自社株の評価」

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今回のテーマは、「自社株の評価」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年9月8日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年9月8日実施)【第5問】

【第5問】 次の設例に基づいて、下記の各問(《問63》~《問65》)に答えなさい。
《設 例》
非上場会社のX株式会社(以下、「X社」という)の代表取締役社長であるAさん(75歳)の推定相続人は、妻Bさん(67歳)および長男Cさん(45歳)の2人である。
5年前に製粉会社を退職し、X社に入社した後継者の長男Cさんは、専務取締役として販路拡大に手腕を発揮し、商品開発にも精力的に取り組んでいる。
Aさんは、X社株式の大半を長男Cさんに早期に移転することを検討しており、X社株式の評価額を把握しておきたいと考えている。また、妻Bさんに対しては、Aさんが所有する店舗兼自宅の一部を贈与することで財産の移転を進めたいと考えている。
X社の概要は、以下のとおりである。
〈X社の概要〉
(1) 業種 パン・菓子製造業(従業員数23名)
(2) 資本金等の額 1,000万円(発行済株式総数20,000株、すべて普通株式で1株につき1個の議決権を有している)
(3) 株主構成

(4) 株式の譲渡制限 あり
(5) X社株式の評価(相続税評価額)に関する資料
・X社の財産評価基本通達上の規模区分は「中会社の中」である。
・X社は、特定の評価会社には該当しない。
・X社の比準要素

(6) X社の資産・負債の状況
直前期のX社の資産・負債の相続税評価額と帳簿価額は、次のとおりである。

※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

《問63》 《設例》の〈X社の概要〉に基づき、X社株式の1株当たりの類似業種比準価額を求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、端数処理については、各要素別比準割合および比準割合は小数点第2位未満を切り捨て、1株当たりの資本金等の額50円当たりの類似業種比準価額は10銭未満を切り捨て、X社株式の1株当たりの類似業種比準価額は円未満を切り捨てること。
なお、X社株式の類似業種比準価額の算定にあたり、複数の方法がある場合は、最も低い価額となる方法を選択するものとする。

《問64》 《設例》の〈X社の概要〉に基づき、X社株式の1株当たりの①純資産価額および②
類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式による価額を、それぞれ求めなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は円未満を切り捨てて円単位とすること。
なお、X社株式の相続税評価額の算定にあたり、複数の方法がある場合は、最も低い価額となる方法を選択するものとする。

《問65》 贈与税の配偶者控除(以下、「本控除」という)に関する以下の文章の空欄①~⑥に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。
「本控除の適用を受けるためには、贈与を受けた時において贈与者との婚姻期間が20年以上であることが必要です。また、配偶者から贈与された財産が居住用不動産である場合は、贈与を受けた年の翌年の( ① )までに当該居住用不動産をその者の居住の用に供し、かつ、その後も引き続き居住の用に供する見込みであることが要件とされており、贈与税の申告書を、財産の贈与を受けた日から( ② )日を経過した日以後に作成された戸籍の謄本または抄本、戸籍の附票の写し等を添付して提出する必要があります。
仮に、配偶者から店舗併用住宅(相続税評価額5,500万円、店舗部分60%、居住用部分40%)の2分の1の持分の贈与を受けて本控除の適用を受ける場合、同年中に他の贈与を受けていないときは、贈与税額は( ③ )万円となります。なお、店舗併用住宅の居住の用に供している部分の面積が、その土地等または家屋の面積のそれぞれのおおむね10分の( ④ )以上である場合、その土地等または家屋の全部を居住用不動産に該当するものとしてさしつかえないとされています。
なお、2024年1月1日以降に暦年課税による贈与を受けた者が、当該贈与に係る贈与者の相続において相続人となる場合に、その相続が当該贈与を受けた日の翌日から( ⑤ )年以内に開始したものであるときは、原則として、当該贈与により取得した財産の贈与時の価額を、相続税の課税価格に加算する必要があります。ただし、本控除の適用を受けた財産に係るその控除額に相当する部分の価額は加算対象となりません。また、加算対象贈与財産のうち、相続の開始前3年以内に取得した財産以外の財産については、その財産の価額の合計額から最高で( ⑥ )万円を控除することができます」

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年9月8日実施)【第5問】

《問63》〈答〉 4,369(円)
《問64》〈答〉 ① 7,260(円) ② 5,091(円)
《問65》
〈答〉 ① 3月15 日 ② 10(日) ③ 131(万円) ④ 9⑤ 7(年) ⑥ 100(万円)

問63
X社株式の1株当たりの類似業種比準価額を求める。
なお、複数の方法がある場合には、最も低い価額になる方法を選択する。

※類似業種比準方式とは、類似業種(評価会社の事業内容と類似する業種の上場会社)の株価を基として、評価会社と類似業種の1株当たりの配当金額、利益金額及び純資産価額の3要素を比較して求めた比準割合を乗じ、その 70%(注)相当額によって評価する方式をいう。
 (注)中会社を評価する場合は60%、小会社を評価する場合は50%とする

X社の1株あたりの資本金額
$\frac{1,000万円}{20,000}$=500円

578円×$\dfrac{\dfrac{8.2円}{7.3円}+\dfrac{55円}{42円}+\dfrac{600円}{433円}}{3}×0.6×\frac{500円}{50円}$

類似業種比準価額
$\frac{1000万円}{20000株}$=500円
578円×$\dfrac{\dfrac{8.2円}{7.3円}+\dfrac{55円}{42円}+\dfrac{600円}{433円}}{3}
=578円 ×(1.12+1.30+1.38)÷3×0.6×10
=578円×1.26×0.6×10
=4,369円

この式は以下のように構成されている。
・578円:類似業種の株価(A)
・(8.2 ÷ 7.3 + 55 ÷ 42 + 600 ÷ 433) ÷ 3(配当・利益・純資産の単純平均比率)
・0.6:斟酌率(中会社)
・ (500 ÷ 50):株式単位調整

なお、「(500 ÷ 50)」という式は、株式単位調整に関する計算で、非上場会社の株式評価において非常に重要な意味を持つ。

株式単位調整とは?
非上場会社の株式を評価する際、国税庁の「類似業種比準価額方式」では、1株あたりの価額を求めるために、資本金を基準単位で割った株数を使うというルールがある。

式の意味:「500 ÷ 50」

項目内容
500円評価対象会社(X社)の1株あたりの資本金額(=資本金1,000万円 ÷ 20,000株) 
50円国税庁が定める評価単位(1株あたりの資本金額の基準)

この式は、評価対象会社の株式が、国税庁の基準単位に対して何倍の価値を持つかを示しています。

なぜ調整が必要なのか?
類似業種比準価額方式では、上場企業の株価を基準にして非上場企業の株価を評価するが、上場企業の株式は通常「1株あたり資本金50円」で設計されている。

基準にして非上場企業の株価を評価するが、上場企業の株式は通常「1株あたり資本金50円」で設計されている。
一方、非上場企業では、1株あたりの資本金額が異なることが多いため、評価額を調整する必要があるから。

(実際の調整例)
X社の資本金:1,000万円
発行株式数:20,000株
1株あたり資本金:500円(=資本金1,000万円 ÷ 20,000株)
基準単位:50円
株式単位調整係数 = $\frac{500}{50} $= 10

つまり、X社の株式は、基準単位の10倍の価値を持つ株式として評価されることになる。

用語意味 
株式単位調整評価対象会社の1株あたり資本金額を、国税庁の基準単位(50円)で割ることで、評価額を補正する手法。上場企業との比較を公平にするため 評価額が「調整係数 × 類似業種比準価額」で算出される。

類似業種比準価額


問64
X社株式の1株当たりの
①純資産価額
②類似業種比準方式と純資産価額方式による価額

なお、複数の方法がある場合には、最も低い価額になる方法を選択する。

(計算の前提と通達内容)
財基通185以下では、次の手順で株式の評価価額を定めている。
第1節 株式及び出資|国税庁

1.相続税評価額ベースの純資産額(資産合計 − 負債合計)から帳簿純資額を控除して、評価差額を算出する。
2.相続税評価額ベースの純資産額から評価差額に対する法人税等相当額(37%)を控除して、調整後の純資産額を出す。
3.調整後の純資産額を課税時期の発行済株式数で除する。

※(37%):法人税(地方法人税を含む。)、事業税(特別法人事業税を含む。)、道府県民税及び市町村民税の税率の合計に相当する割合

(与えられたデータ)
•相続税評価額ベースの資産:流動 9,000万円 + 固定 18,000万円 = 27,000万円
•相続税評価額ベースの負債:流動 3,000万円 + 固定 8,000万円 = 11,000万円
•発行済株式数:20,000株

相続税評価額ベースの純資産
27,000万円− 11,000万円 =16,000万円

(評価差額と法人税相当額)
•帳簿純資産:資産23,000万円 − 負債11,000万円 = 12,000万円
•評価差額:16,000万円 − 12,000万円 = 4,000万円
•法人税相当額:4,000万円 × 37% = 1,480万円

(調整後の純資産額)
16,000万円−1,480万円=14,520万円

1株当たり価額(調整後)
14,520万円÷20,000株=7,260円/ 株
∴7,260円となる。

②類似業種比準方式と純資産価額方式の併用方式による価額
財産評価基本通達に基づいて、「中会社の中」に該当する場合、併用方式のL値は 75%(純資産25%)となる。

(取引相場のない株式の評価の原則)
(与えられたデータ)
•類似業種比準方式(1株価額): 4,369円(問63より)
•純資産価額方式(1株価額):7,260円(①より)
•併用割合(中会社の中):類似業種比準方式:L = 75%, 純資産方式 = 25%

(計算式)
類似業種比準価額×L+1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)×(1-L)4,369円×0.75+7,260円×0.25=3,276.75+1,815=5,091.75円
∴5,091円となる。

(参考)(取引相場のない株式の評価の原則)(国税庁Webサイト)


問65
「本控除の適用を受けるためには、贈与を受けた時において贈与者との婚姻期間が20年以上であることが必要です。また、配偶者から贈与された財産が居住用不動産である場合は、贈与を受けた年の翌年の( ①3月 15 日 )までに当該居住用不動産をその者の居住の用に供し、かつ、その後も引き続き居住の用に供する見込みであることが要件とされており、贈与税の申告書を、財産の贈与を受けた日から( ②10 )日を経過した日以後に作成された戸籍の謄本または抄本、戸籍の附票の写し等を添付して提出する必要があります。 
仮に、配偶者から店舗併用住宅(相続税評価額5,500万円、店舗部分60%、居住用部分40%)の2分の1の持分の贈与を受けて本控除の適用を受ける場合、同年中に他の贈与を受けていないときは、贈与税額は( ③131)万円となります。なお、店舗併用住宅の居住の用に供している部分の面積が、その土地等または家屋の面積のそれぞれのおおむね10分の( ④ )以上である場合、その土地等または家屋の全部を居住用不動産に該当するものとしてさしつかえないとされています。 
なお、2024年1月1日以降に暦年課税による贈与を受けた者が、当該贈与に係る贈与者の相続において相続人となる場合に、その相続が当該贈与を受けた日の翌日から( ⑤7 )年以内に開始したものであるときは、原則として、当該贈与により取得した財産の贈与時の価額を、相続税の課税価格に加算する必要があります。ただし、本控除の適用を受けた財産に係るその控除額に相当する部分の価額は加算対象となりません。また、加算対象贈与財産のうち、相続の開始前3年以内に取得した財産以外の財産については、その財産の価額の合計額から最高で( ⑥100 )万円を控除することができます。」

③について
贈与財産の評価額:5,500万円
2分の1(50%)の持分の贈与を居住用40%、店舗用10%とする。
居住部分5,500万円×40%=2,200万円
2,200万円-2,000万円(配偶者控除)=200万円①
店舗部分5,500万円×10%=550万円②
①+②=750万円
750万円-110万円(基礎控除)=640万円
640万円×40%-125万円=131万円

居住用部分から優先的に贈与を受けたものとして配偶者控除を適用して申告することができる。なお、この取扱いは贈与税の配偶者控除を適用する場合に限り認められているものである。

No.4455 配偶者控除の対象となる居住用不動産の範囲

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