今回のテーマは、「不動産の売買契約に係る民法の規定」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 2級 学科試験(2025年5月25日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
問題 43
不動産の売買契約に係る民法の規定に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、特約については考慮しないものとする。
1.不動産の売買契約において買主が売主に手付金を交付した場合、買主が契約の履行に着手するまでは、売主はその手付金を買主に返還することにより当該売買契約を解除することができる。
2.売買契約締結後、買主の責めに帰すことのできない事由により、当該契約の目的物の引渡債務の全部が履行不能となった場合、買主は履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
3.代理権を有しない者が本人に代わって不動産の売買契約を行った場合、本人が追認するときは、別段の意思表示がない限り、当該売買契約の効力は追認をした時から将来に向かって生じる。
4.不動産が共有されている場合に、各共有者が、自己が有している持分を第三者に譲渡するときは、他の共有者全員の同意を得なければならない。
正解:2
それでは、各肢を検討していこう。
1 誤り。
民法557条では「手付解除」は相手方が履行に着手するまで可能とされている。
つまり、売主が解除するには買主が履行に着手していないことが条件。
しかし、売主が解除するには「倍返し」が必要である(手付金の倍額を返す)。
よって、「手付金を返還するだけで解除できる」という記述は誤り。
(手付)
第557条 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
(略)
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2 正しい。
民法542条により、履行不能の場合は催告なしで解除可能である。
しかも、買主に責任がない場合は、当然に解除権が認められる。
つまり、目的物が滅失したなどの理由で引渡しが不可能になった場合、買主はすぐに契約解除できる。
(催告によらない解除)
第542条 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
一 債務の全部の履行が不能であるとき。
(略)
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3 誤り。
民法116条では、追認の効力は契約時にさかのぼって生じるとされている。
よって、「将来に向かって効力が生じる」という記述は誤り。
第116条 追認は、別段の意思表示がないときは、契約の時にさかのぼってその効力を生ずる。(略)
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4 誤り。
民法206条では、共有者は自己の持分を自由に譲渡できるとされている。
他の共有者の同意は不要である。
(所有権の内容)
第206条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
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