今回のテーマは、譲渡所得の課税の特例・建ぺい率・容積率」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年9月8日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年9月8日実施)【第4問】
【第4問】 次の設例に基づいて、下記の各問(《問60》~《問62》)に答えなさい。
《設 例》
会社員のAさん(50歳)は、K市内にある自宅で妻と2人で暮らしている。自宅はAさんが5年前に父親の相続により取得したものであり、建築から40年が経過した建物は、所々に傷みが目立つようになってきた。自宅の建替えも検討したが、現在住んでいる場所よりも交通の便のよい地域に引っ越したいと考え、自宅を売却するつもりでいる。
Aさんは、引っ越し先を探すなかで、売りに出されていた甲土地に興味を持ち、甲土地を購入して、その上に自宅として戸建て住宅を建築することを検討している。
甲土地の概要は、以下のとおりである。

(注)
・甲土地は320㎡の長方形の土地であり、近隣商業地域に属する部分は160㎡、第一種低層住居専用地域に属する部分は160㎡である。
・甲土地は建蔽率の緩和について特定行政庁が指定する角地ではない。
・幅員3mの公道は、建築基準法第42条第2項により特定行政庁の指定を受けた道
路である。3m公道の中心線は、当該道路の中心部にある。また、3m公道の甲土地の反対側は宅地であり、がけ地や川等ではない。
・指定建蔽率および指定容積率は、それぞれ都市計画において定められた数値である。
・特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域ではない。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。
《問60》 建築基準法の道路および固定資産税に関する以下の文章の空欄①~⑥に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、問題の性質上、明らかにできない部分は「□□□」で示してある。
〈建築基準法の道路〉
Ⅰ 「都市計画区域および準都市計画区域内の建築物の敷地は、原則として、建築基準法上の道路に( ① )m以上接していなければなりません。この建築基準法上の道路とは、公道や私道という分類に関係なく、原則として、次のものをいいます」
・建築基準法第42条第1項
次のいずれかに該当する幅員( ② )m以上のもの

〈固定資産税〉
Ⅱ 「固定資産税は、1月1日現在、土地、家屋等の所有者として固定資産課税台帳に登録されている者に課されます。固定資産税の税額は、課税標準額に税率を乗じて得た額とされ、標準税率は( ⑤ )%とされていますが、地方公共団体によって税率が異なることがあります。なお、住宅用地に係る固定資産税の課税標準については、住宅1戸につき200㎡までの部分(小規模住宅用地)について課税標準となるべき価格の( ⑥ )分の1の額とする特例があります」
《問61》 Aさんが、下記の〈譲渡資産および買換資産に関する資料〉に基づき、自宅を買い換えた場合、次の①および②に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は100円未満を切り捨てて円単位とすること。なお、本問の譲渡所得以外の所得や所得控除等は考慮しないものとする。
① 「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用を受けた場合の譲渡所得の金額に係る所得税および復興特別所得税、住民税の合計額はいくらか。
② 「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」および「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用を受けた場合の譲渡所得の金額に係る所得税および復興特別所得税、住民税の合計額はいくらか。

《問62》 甲土地に耐火建築物を建築する場合、次の①および②に答えなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は㎡表示とすること。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
① 建蔽率の上限となる建築面積はいくらか。
② 容積率の上限となる延べ面積はいくらか。
《問60》
〈答〉 ① 2(m) ② 4(m) ③ 2(年) ④ 位置指定(道路)⑤ 1.4(%) ⑥ 6(分の1)
《問61》
〈答〉 ① 723,200(円)〈答〉 ② 5,854,500(円)
《問62》
〈答〉 ① 248(㎡) ② 620(㎡)
《問60》
〈建築基準法の道路〉
Ⅰ 「都市計画区域および準都市計画区域内の建築物の敷地は、原則として、建築基準法上の道路に(① 2)m以上接していなければなりません。この建築基準法上の道路とは、公道や私道という分類に関係なく、原則として、次のものをいいます」
– 建築基準法第42条第1項
次のいずれかに該当する幅員(② 4)m以上のもの
種類 | 内容 |
42条1項1号道路 | 道路法による道路(国道、都道府県道等) |
42条1項2号道路 | 都市計画法や土地区画整理法等による道路 |
42条1項3号道路 | 建築基準法第3章の規定が適用されるに至った際現に存在する道 |
42条1項4号道路 | 道路法や都市計画法等による新設等の事業計画のある道路で、(③ 2)年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの |
42条1項5号道路 | 土地を建築物の敷地として利用するため、道路法等によらないで築造する一定の基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの(一般に(④ 位置指定)道路と呼ばれる) |
建築基準法42条2項
42条2項道路:建築基準法第3章の規定が適用されるに至った際現に建築物が立ち並んでいる幅員(② 4)m未満の道で、特定行政庁の指定したもの
接道義務
建築物の敷地は、道路(次に掲げるものを除く。第四十四条第一項を除き、以下同じ。)に2メートル以上接しなければならない。(建築基準法43条1項)
〈固定資産税〉
Ⅱ 「固定資産税は、1月1日現在、土地、家屋等の所有者として固定資産課税台帳に登録されている者に課されます。固定資産税の税額は、課税標準額に税率を乗じて得た額とされ、標準税率は(⑤ 1.4)%とされていますが、地方公共団体によって税率が異なることがあります。なお、住宅用地に係る固定資産税の課税標準については、住宅1戸につき200㎡までの部分(小規模住宅用地)について課税標準となるべき価格の(⑥ 6)分の1の額とする特例があります」
(小規模住宅用地の特例の適用条件)
住宅1戸につき200㎡までの部分が対象
敷地全体が200㎡を超えていても、そのうち200㎡までの部分には「小規模住宅用地」として課税標準額を6分の1に軽減する特例が適用される。
残りの部分(200㎡を超える部分)は「一般住宅用地」として課税標準額を3分の1に軽減される。
《問61》
① 「特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用を受けた場合の譲渡所得の金額に係る所得税および復興特別所得税、住民税の合計額
「収入金額」80,000,000 円-76,000,000 円=4,000,000 円
「必要経費」(80,000,000 円×5%+4,800,000 円)×$\frac{4,000,000 円}{80,000,000 }$円
譲渡所得
4,000,000 円-(80,000,000 円×5%+4,800,000 円)×$\frac{4,000,000 円}{80,000,000}$ 円=3,560,000 円
3,560,000 円×15%=534,000 円
534,000 円×2.1%=11,214 円
534,000 円+11,214 円=545,200 円(100 円未満切捨て)
3,560,000 円×5%=178,000 円
545,200 円+178,000 円=723,200 円
〈答〉 ① 723,200(円)
No.3358 売った金額より少ない金額でマイホームを買い換えたとき
この特例の適用を受ける場合には、マイホームを譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例(被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例を除きます。)やマイホームを売ったときの軽減税率の特例の適用を重ねて受けることはできない。
② 「居住用財産を譲渡した場合の 3,000 万円の特別控除」および「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」の適用を受けた場合の譲渡所得の金額に係る所得税および復興特別所得税、住民税の合計額
80,000,000 円-(80,000,000 円×5%+4,800,000 円)-30,000,000 円=41,200,000 円
41,200,000 円×10%=4,120,000 円
4,120,000 円×2.1%=86,520 円
4,120,000 円+86,520 円=4,206,500 円(100 円未満切捨て)
41,200,000 円×4%=1,648,000 円
4,206,500 円+1,648,000 円=5,854,500 円
〈答〉 ② 5,854,500(円)
居住用財産の長期譲渡所得に関する課税の特例
・「3,000万円特別控除」と併用可能
・譲渡資産が居住用であること(現に住んでいる、または過去に住んでいた家屋)
・所有期間が譲渡年の1月1日時点で10年超
・譲渡年の前年・前々年にこの特例を使っていないこと
・親族など「特別な関係者」への譲渡でないこと
・他の譲渡所得特例(買換え・交換など)を使っていないこと
《問62》
①建蔽率 = $\frac{建築面積}{敷地面積}$ × 100(%)
(条件整理)
・3m公道→セットバック部分あり
・両側に0.5mずつ
建蔽率緩和のポイント(防火地域 × 耐火建築物)
建蔽率が10%緩和される
・建築物が耐火建築物であること(主要構造部が耐火性能を有する)。
・建築地が防火地域に指定されていること。
・(特例)指定建蔽率が80%の地域においては、建蔽率の制限がなくなり、100%まで建築可能になる。(建築基準法53条6項1号)
・「角地緩和(+10%)」と併用可能
(甲土地)
近隣商業地域
10m×(16m-0.5m)=155㎡
指定建蔽率80%
防火地域に耐火建築物
→制限なし
∴155㎡
第一種低層住居専用地域
10m×(16m-0.5m)=155㎡
指定建蔽率50%
緩和措置なしに耐火建築物
ただし近隣商業地域が防火地域のため10%緩和
「建築物が防火地域及び準防火地域にわたる場合においては、その全部について防火地域内の建築物に関する規定を適用する(建築基準法65条2項本文)
∴155㎡×(50%+10%)=93㎡
155㎡+93㎡=248㎡
②容積率(%)=$\frac{延べ床面積}{敷地面積}$(㎡)×100
甲土地 248㎡
近隣商業地域(A) 155㎡
指定建蔽率400%
前面道路の幅員による容積率制限6/10
5m道路 → 5 × 0.6 ×100 = 300%
前面道路(前面道路が二以上あるときは、その幅員の最大のもの。)
(建築基準法52条2項)
指定容積率は400%なので、制限容積率は300%(小さい方)となる
∴155㎡×300%=465㎡①
第一種低層住居専用地域 93㎡
指定建蔽率100%
前面道路の幅員による容積率制限4/10
5m道路 → 5 × 0.4 = 200%
指定容積率は100%なので、制限容積率は100%(小さい方)となる
∴155㎡②
①465㎡+②155㎡=620㎡
コメント