FP1級の過去問を解こう(2024年1月)「遺留分に関する民法の特例」

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今回のテーマは、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律による『遺留分に関する民法の特例』」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2024年1月28日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2024年1月28日実施)《問50》

《問50》 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律による「遺留分に関する民法の特例」(以下、「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1) 本特例の対象となる後継者は、旧代表者の推定相続人のうち、旧代表者から贈与により非上場株式を取得したことにより特例中小会社の総株主の議決権の過半数を有し、かつ、合意時点において当該特例中小会社の代表者である者に限られる。
2) 後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について除外合意と固定合意の双方またはいずれか一方の合意をする場合、旧代表者の推定相続人全員で合意をし、公正証書によりその旨を定めた合意書を作成しなければならない。
3) 後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について固定合意をする場合、併せて、後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式以外の財産について、遺留分を算定するための財産の価額に算入しない旨の定めをすることができる。
4) 本特例の合意は、後継者が合意をした日から1カ月以内に家庭裁判所の確認を申し立て、当該確認を受けた日から1カ月以内にした申請により、経済産業大臣の許可を受けることによって、その効力を生ずる。

一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2024年1月28日実施)

正解:3

それでは、問題を検討していこう。
なお、問題は、特に指示のない限り、2023年10月1日現在施行の法令等に基づいて出願されているが、正解及び解説は、執筆時点の法令等に基づくものする。

なお、本稿では、「 中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」を「円滑化法」という。

また、「遺留分に関する民法の特例」を「民法特例」という。

1 誤り。

本特例の対象となる後継者は、旧代表者の推定相続人に限られない。(円滑化法3条3項)

民法特例を受けるための要件

中小企業庁・本制度のパンフレット(minpou_pamphlet.pdf)より抜粋

2 誤り。

後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について除外合意と固定合意の双方またはいずれか一方の合意をする場合、旧代表者の推定相続人全員で合意をする必要がある。そして、書面により、内容の定めをすることができる。(円滑化法4条1項)

したがって、公正証書である必要はない。

会社又は個人事業の経営を承継する際、この民法特例を活用すると、後継者を含めた先代経営者の推定相続人全員の合意の上で、先代経営者から後継者に贈与等された自社株式・事業用資産の価額について、
①遺留分を算定するための財産の価額から除外(除外合意)、又は
②遺留分を算定するための財産の価額に算入する価額を合意時の時価に固定(固定合意)(※)
をすることができます(両方を組み合わせることも可能です)。
(※)会社の自社株式の場合のみ利用可能。
(中小企業庁・本制度のパンフレット(minpou_pamphlet.pdf)より抜粋)

3 正しい。

後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式について固定合意をする場合、併せて、後継者が旧代表者から贈与を受けた非上場株式以外の財産について、遺留分を算定するための財産の価額に算入しない旨の定めをすることができる。(除外合意)(円滑化法5条)

なお、固定合意は、会社の自社株式の場合のみ利用可能である。

4 誤り。

民法特例を利用するには、会社の経営の承継の場合個人事業の経営の承継の場合の別に応じて、先述の要件を満たした上で、「推定相続人全員及び後継者の合意」を得て、「経済産業大臣の確認」及び「家庭裁判所の許可」を受けることが必要である。

手続きの流れ

中小企業庁・本制度のパンフレット(minpou_pamphlet.pdf)より抜粋

したがって、本特例の合意は、先代経営者の推定相続人全員(但し、遺留分を有する者に限る)及び後継者で合意をすることが必要である。

また、合意をした日から1カ月以内に、経済産業大臣に申請して確認を受け、当該確認を受けた日から1カ月以内に家庭裁判所の許可を申し立て、その許可を受けることによって、その効力を生ずる。(円滑化法7条・8条)

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