今回のテーマは、「不動産所得」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2024年5月26日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2024年5月26日実施)《問26》
《問26》 居住者に係る所得税の不動産所得に関する次の記述のうち、最も不適切なものはど
れか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。
1) 広告等の看板を設置するため、所有する賃貸アパートの屋上や塀等を使用させることにより受け取る使用料は、不動産所得に該当する。
2) 所有する賃貸アパートを取り壊したことにより生じた損失の金額は、当該貸付が事業的規模に満たない規模で行われていた場合、不動産所得の金額の計算上、その損失の金額を控除する前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入することができる。
3) 居住の用に供していた建物を取り壊して賃貸アパートを建築し、貸付の用に供した場合、自宅の取壊しに要した費用は、不動産所得の金額の計算上、必要経費とはならないが、賃貸アパートの取得価額に算入することができる。
4) 所有する土地に他者の建物の所有を目的とする借地権を設定し、その対価として当該土地の時価の2分の1以下の権利金を受け取ったことによる収入は、不動産所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。
一般社団法人 金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2024年5月26日実施)
正解:3
それでは、各肢を検討していこう。
なお、問題は、2023年10月1日現在施行されている法令等により出題されているが、正解及び解説は執筆時点で現在施行されている法令等に基づいて執筆する。
1 正しい。
広告等の看板を設置するため、所有する賃貸アパートの屋上や塀等を使用させることにより受け取る使用料は、不動産所得に該当する。
2 正しい。
資産損失(建物の取壊しによる損失)は、事業的規模とそれ以外では必要経費に算入できる金額が異なる。
事業的規模
必要経費に算入できる。損失の場合は損益通算の対象となる。
それ以外
不動産所得の金額を限度として必要経費に算入できる。
3 誤り。
賃貸アパートなどの新築を目的として自己の居住用家屋を取り壊した場合には、その取り壊しはいわゆる生活用資産の処分に当たる。そのため、たとえ今後の不動産所得を得るためのものであっても、その取り壊しにより生じた損失は家事上の経費及びこれに関連する経費として取り扱われることになる。
したがって、建物の取壊費用や取り壊しで生じた資産損失は、不動産所得の金額の計算上必要経費とすることができない。新築した賃貸用固定資産の取得価額に含めることもできない。
4 正しい。
所有する土地に他者の建物の所有を目的とする借地権を設定し、その対価として当該土地の時価の2分の1以下の権利金を受け取ったことによる収入は、不動産所得の金額の計算上、総収入金額に算入する。
なお、2分の1を超える場合には、譲渡所得となる。
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