FP1級の過去問を解こう(2024年5月)法人税「略式別表四」

FP

今回のテーマは、法人税の「略式別表四」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年5月26日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年5月26日実施)【第3問】

【第3問】 次の設例に基づいて、下記の各問(《問57》~《問59》)に答えなさい。
《設 例》
建設業を営むX株式会社(資本金10,000千円、青色申告法人、同族会社かつ非上場会社で株主はすべて個人、租税特別措置法上の中小企業者等に該当し、適用除外事業者ではない。以下、「X社」という)の2024年3月期(2023年4月1日~2024年3月31日。以下、「当期」という)における法人税の確定申告に係る資料は、以下のとおりである。
〈X社の当期における法人税の確定申告に係る資料〉
1.減価償却費に関する事項
当期における減価償却費は、その全額について損金経理を行っている。このうち、器具備品の減価償却費は4,500千円であるが、その償却限度額は3,000千円であった。一方、建物の減価償却費は3,900千円であるが、その償却限度額は4,100千円であった。なお、前期からの繰越償却超過額が当該建物について300千円ある。
2.退職給付引当金に関する事項
当期において、決算時に退職給付費用3,500千円を損金経理するとともに、同額を退職給付引当金として負債に計上している。また、退職した従業員に対する退職金8,000千円および中小企業退職金共済の掛金2,200千円の支払の際に退職給付引当金を合計10,200千円取り崩し、いずれも同額を現金で支払っている。
3.税額控除に関する事項
当期における「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除」に係る税額控除額が350千円ある。
4.「法人税、住民税及び事業税」等に関する事項
(1) 損益計算書に表示されている「法人税、住民税及び事業税」は、預金の利子について源泉徴収された所得税額60千円・復興特別所得税額1,260円および当期確定申告分の見積納税額2,300千円の合計額2,361,260円である。なお、貸借対照表に表示されている「未払法人税等」の金額は2,300千円である。
(2) 当期中に「未払法人税等」を取り崩して納付した前期確定申告分の事業税(特別法人事業税を含む)は720千円である。
(3) 源泉徴収された所得税額および復興特別所得税額は、当期の法人税額から控除することを選択する。
(4) 中間申告および中間納税については、考慮しないものとする。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。


《問57》 《設例》のX社の当期の〈資料〉と下記の〈条件〉に基づき、同社に係る〈略式別表四(所得の金額の計算に関する明細書)〉の空欄①~⑦に入る最も適切な数値を、解
答用紙に記入しなさい。なお、別表中の「***」は、問題の性質上、伏せてある。
〈条件〉
・設例に示されている数値等以外の事項については考慮しないものとする。
・所得の金額の計算上、選択すべき複数の方法がある場合は、所得の金額が最も低くなる方法を選択すること。


《問58》 前問《問57》を踏まえ、X社が当期の確定申告により納付すべき法人税額を求めなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は100円未満を切り捨てて円単位とすること。


《問59》 法人税における欠損金の繰越控除・繰戻還付および確定申告・中間申告に関する以下の文章の空欄①~⑦に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。
〈青色申告法人の欠損金の繰越控除・繰戻還付〉
Ⅰ 「2023年4月1日から2024年3月31日までの間に開始する事業年度において、損金
の額に算入することができる欠損金額は、事業年度終了の日における資本金の額または出資金の額が( ① )円以下の中小法人等については、繰越欠損金控除前の所得の金額が限度となりますが、中小法人等以外の法人については、繰越欠損金控除前の所得の金額の( ② )%相当額が限度となります。
なお、2023年4月1日から2024年3月31日までの間に開始する事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は、最長で( ③ )年となります。また、欠損金額をその事業年度開始の日前( ④ )年以内に開始した事業年度に繰り戻して法人税額の還付を請求することもできます」
〈法人税の確定申告・中間申告〉
Ⅱ 「法人税の申告には中間申告と確定申告があります。事業年度が6カ月を超える普通法人は、所轄税務署長に対し、原則として、事業年度開始の日以後( ⑤ )カ月を経過した日から2カ月以内に中間申告書を提出し、事業年度終了の日の翌日から2カ月以内に確定申告書を提出しなければなりません。
中間申告には、納付税額を、前事業年度の確定法人税額を前事業年度の月数で除した値に6を乗じて算出する方法(予定申告)と、当該事業年度開始の日以後6カ月の期間を一事業年度とみなして仮決算を行い、それに基づいて算出する方法があります。ただし、原則として、仮決算による中間申告税額が予定申告税額を超える場合や、予定申告税額が( ⑥ )円以下である場合には、仮決算による中間申告をすることはできません。
中間申告書および確定申告書は( ⑦ )を利用することで、税務署に出向くことなく提出することができます。( ⑦ )とは、国税に関する各種の手続について、インターネットを利用して電子的に手続が行えるシステムで、事業年度開始時における資本金の額または出資金の額が1億円を超える内国法人は、原則として、中間申告書および確定申告書を( ⑦ )を利用して提出しなければならないとされています」

《問57》
〈答〉 ① 2,300,000(円) ② 1,500,000(円) ③ 3,500,000(円)④ 200,000(円) ⑤ 10,200,000(円) ⑥ 61,260(円)⑦ 11,000,000(円)
《問58》
〈答〉 1,484,700(円)
《問59》
〈答〉 ① 1億(円) ② 50(%) ③ 10(年) ④ 1(年)⑤ 6(カ月) ⑥ 10 万(円) ⑦ e-Tax

《問57》
(加算)
①損金経理をした納税充当金
2,300千円=,2300,000円
②減価償却の償却超過額
器具備品の減価償却費は4,500千円、償却限度額は3,000千円
4,500千円-3,000千円=1,500千円=1,500,000円
③退職給付費用の損金不算入額
3,500千円=3,500,000円

退職給付費用3,500千円を損金経理するとともに、同額を退職給付引当金として負債に計上している。
また、退職した従業員に対する退職金8,000千円および中小企業退職金共済の掛金2,200千円の支払の際に退職給付引当金を合計10,200千円取り崩し、いずれも同額を現金で支払っている。 
退職給付費用(引当金計上分)は、税務上は損金として認められないため、全額を加算する。

(減算)
④減価償却超過額の当期認容額
4,100千円-3,900千円=200千円
=200,000円

建物の減価償却費は3,900千円、その償却限度額は4,100千円
前期からの繰越償却超過額が当該建物について300千円ある。

「当期認容額」とは、前期以前に損金不算入として加算処理された減価償却超過額のうち、当期に税務上損金算入が認められる金額を指す。

⑤退職給付引当金の当期認容額
8,000千円+2,200千円=10,200千円
=10,200,000

・実際に支払った退職金(退職給付引当金の取り崩し分)は、税務上損金として認められるため、減算。
・中小企業退職金共済(中退共)の掛金は、実際に支払った金額に限り、減算。

⑥法人税額から控除される所得税額
(所得税額)60千円+(復興特別所得税額)1,260円=61,260円

当期利益の額 
14,758,740円

加算
①2,300,000円
②1,500,000円
③3,500,000円
小計
7,300,000円

減算
④200,000円
⑤10,200,000円
小計10,400,000円

仮計11,658,740円
⑥61,260円
合計11,720,000
減算△720,000円

所得金額又は欠損金額11,000,000円

減算
未払法人税等を取り崩して納付した前期確定申告分の事業税(特別法人事業税を含む)
720千円

参考)法人税の所得金額は、当期利益の額に加算額を加え、減算額を減らした「仮計」に「法人税額から控除される所得金額を「加え」て、「欠損金等」を控除して求める。

所得税額は、最終的には法人税額から控除されるが、会計上は租税公課として費用処理されているので、一旦は所得金額に加算する。

No.5300 租税公課等の損金算入の可否と租税の損金算入時期

《問58》
(計算過程)
課税所得金額:11,000,000円
法人税率(中小企業者等):
8,000,000円まで:15% → 1,200,000円
8,000,000円超の3,000,000円:23.2% → 696,000円
合計法人税額(控除前):1,896,000円

税額控除:
特別控除:350,000円
源泉徴収税額(所得税+復興特別所得税):61,260円
控除後法人税額:1,896,000 − 350,000 − 61,260 = 1,484,740円
100円未満切り捨て:1,484,700円

《問59》

空欄正解根拠・補足
1億中小法人等の定義:資本金または出資金が1億円以下 
50中小法人等以外の法人は、所得金額の50%が繰越欠損金控除の限度 
10欠損金の繰越控除期間は最長10年(平成30年4月1日以降)
1欠損金の繰戻還付は、事業年度開始の日前1年以内の事業年度が対象
6中間申告は事業年度開始後6か月経過から2か月以内に提出
100,000予定申告税額が10万円以下の場合は仮決算による申告不可
e-Tax電子申告システム「e-Tax」により申告可能。資本金1億円超の法人は原則e-Tax提出義務あり

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