FP1級の過去問を解こう(2024年9月)「ポートフォリオ」

FP

今回のテーマは、「ポートフォリオ」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年9月8日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2024年9月8日実施)【第2問】

【第2問】 次の設例に基づいて、下記の各問(《問54》~《問56》)に答えなさい。
《設 例》
Aさん(44歳)は、X社株式(東京証券取引所上場銘柄)、投資信託Yおよび投資信託Zを保有している。現在、X社株式の追加購入を検討しており、十分な余裕資金はあるものの、手元の資金を確保しておくために信用取引を利用したいと考えている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。

《問54》
《設例》の〈X社の財務データ等〉に基づいて、Mさんが、Aさんに対して説明した以下の文章の空欄①~④に入る最も適切な数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、計算結果は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。
〈ROE、サスティナブル成長率〉
Ⅰ 「ROEは、株主が出資した資金で企業がどれだけの利益を上げたのかを示す指標であり、社のROEは( ① )%です。一般に、ROEが高いほど経営の効率性が高いと判断されます。
また、サスティナブル成長率は、内部留保のみを事業に再投資すると仮定した場合に期待される成長率であり、X社のサスティナブル成長率は( ② )%です」
〈インタレスト・カバレッジ・レシオ〉
Ⅱ 「X社のインタレスト・カバレッジ・レシオは( ③ )倍です。この数値が高いほど金利負担の支払能力が高く、財務に余裕があることを示しますが、同業他社と比較することをお勧めします。また、単年の数値だけではなく、過去のトレンドを把握することで、財務体質が悪化しているか否かを判断することが大切です」
〈負債比率〉
Ⅲ 「X社の負債比率は( ④ )%です。一般に、負債比率が低いほど財務上の安全性が高いとされ、負債比率が100%以下であれば、財務状態は良好であると判断されます」

《問55》
《設例》の〈投資信託Yおよび投資信託Zの実績収益率・標準偏差・相関係数〉に基
づいて、次の①および②に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。なお、シャープ・レシオについては、安全資産利子率を0.10%として計算すること。
① 投資信託Yのシャープ・レシオはいくらか。
② 投資信託Yと投資信託Zを7:3の割合で組み入れたポートフォリオの標準偏差はい
くらか。

《問56》
Mさんは、Aさんに対して、信用取引について説明した。Mさんが説明した以下の文章の空欄①~⑥に入る最も適切な語句または数値を、解答用紙に記入しなさい。なお、計算結果は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入し、小数点以下第2位までを解答すること。
「新たに信用取引を行う場合の委託保証金の額は、法令により、信用取引に係る有価証券の約定価額の30%相当額以上とされており、約定価額の30%相当額が( ① )万円に満たない場合は( ① )万円とされます。信用取引の委託保証金について、金銭ではなく、その代用として有価証券を差し入れる場合、当該有価証券は、その時価に代用掛目を乗じた金額で評価されます。代用掛目は、有価証券の種類だけでなく、信用取引を取り扱う証券会社によっても異なります。
仮に、信用取引において、保有するS社株式4,000株(1株当たり時価1,250円)と金銭200万円を担保として差し入れ、T社株式(1株当たり時価4,000円)を新規に売建てする場合、株式担保の代用掛目が80%、委託保証金率が30%とすると、手数料等を考慮しなければ、売建て可能なT社株式の最大株数は( ② )株となります。
信用取引では、反対売買による決済だけでなく、( ③ )や現渡しによる決済を行うことも可能です。なお、信用取引で買い建てた銘柄の配当や株主優待は、権利付最終日までに( ③ )を行い、現物株式として保有することで受け取ることができます。
制度信用取引における弁済の繰延期限は、証券取引所の規則により、原則として最長で( ④ )カ月とされています。一方、一般信用取引では、投資家と証券会社との間で自由に期限を設定することができます。
なお、制度信用取引において、貸株残高が融資残高を超過して株不足が発生した場合、証券金融会社は、その不足株数を機関投資家等から調達しますが、その調達に要した費用は( ⑤ )と呼ばれます。( ⑤ )は、発生した銘柄に係る信用取引の売り方が負担することになります。
信用取引による売買が成立した後に相場の変動による評価損が発生し、証券会社が定める最低委託保証金維持率を下回った場合、追加保証金(追証)を差し入れるなどの方法により、委託保証金の不足を解消しなければなりません。また、特定の銘柄に係る信用取引の利用が過度であると認められる場合、証券取引所が新規の信用取引の利用を抑制するため、一般に( ⑥ )規制と呼ばれる信用取引に関する規制を実施することがあります。( ⑥ )規制では、対象となる銘柄の委託保証金率の引上げや委託保証金のうちの現金の割合の指定などの措置がとられます」

一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>【第2問】(2024年9月8日実施)

《問54》
〈答〉 ① 10.81(%) ② 5.86(%) ③ 120.41(倍) ④ 93.23(%)
《問55》
〈答〉 ① 1.16 〈答〉 ② 12.17(%)
《問56》
〈答〉 ① 30(万円) ② 5,000(株) ③ 現引き ④ 6(カ月)⑤ 品貸料 ⑥ 増担保(規制)

《問 54》
ROE = $\frac{当期純利益}{自己資本}$ × 100
$\frac{13,100}{121,200}$×100=10.808(小数点以下第3位を四捨五入)
10.81%
※自己資本には新株予約権を含めない。

サステナブル成長率 = 自己資本利益率(ROE) × 利益剰余金比率(1 – 配当性向)
配当性向(%)= $\frac{配当金支払総額}{当期純利益}$ × 100

配当性向(%)=$\frac{6,000}{13,100}$×100=45.80%
サステナブル成長率 =0.10808×0.542=0.0585×100=5.857

※パーセント同士の掛け算は、まずパーセントを小数または分数に変換し、その後で掛け算を行う。

インタレストカバレッジレシオ = $\frac{(営業利益 + 受取利息 + 受取配当金)}{ 支払利息}$

$\frac{(20,000+270+200)}{170}$
$\frac{20,470}{170}$=120.41倍

負債比率(%)=$\frac{負債}{自己資本}$×100
$\frac{113,000}{121,200}$×100=93.23%


《問 55》
①シャープ・レシオ = $\frac{(ポートフォリオの収益率 – 無リスク金利)}{ ポートフォリオのリスク(標準偏差)}$

Y=$\frac{(15.20-0.1)}{13.00}$=1.16
無リスク金利(安全資産利子率):0.1%

無リスク金利(安全資産利子率)とは、理論上リスクがないとされる資産から得られる利子のこと。一般的に、国債や政府保証債などが無リスク資産として扱われる。現実には完全にリスクがない資産は存在しないため、リスクが極めて低い金融商品(例:先進国の短期国債)が代用される。この金利は、割引率の算出や、投資判断の基準として用いられる。

ポートフォリオの標準偏差

「標準偏差」とは?
標準偏差は、データのばらつき(散らばり)を数値で表したものである。
投資の世界では、リターンの変動の大きさ=リスクと考える。

ポートフォリオの標準偏差の定義

ポートフォリオの標準偏差は、複数の資産を組み合わせたときのリスク(価格の変動の大きさ)を表す指標です。投資の世界では、リターンの変動の大きさがリスクとみなされます。

計算式(2資産の場合)

σₚ = √[ w_Y² × σ_Y² + w_Z² × σ_Z² + 2 × w_Y × w_Z × ρ × σ_Y × σ_Z ]

・σₚ:ポートフォリオ全体の標準偏差(リスク)
・w_Y, w_Z:資産YおよびZの投資比率
・σ_Y, σ_Z:資産YおよびZの標準偏差(個別のリスク)
・ρ:資産YとZの相関係数(値動きの連動性)

ポイント

・相関係数(ρ)が低い(または負)ほど、リスク分散効果が高まる。
・同じリスクの資産でも、組み合わせ方によって全体のリスクを下げられるのがポートフォリオの魅力。

(0.7^2×13.00^2)+(0.3^2×12.00^2)+2×0.7×0.3×0.80×13.00×12.00
(0.49×169)+(0.09×144)+52.416
82.81+12.96+52.416
=148.186
√148.186=12.17%(小数点以下第3位四捨五入)


参考
電卓で2乗を計算する方法は以下の通り(canonの場合)
基本的な電卓の場合: 数字を入力した後、[×]を1回押し、最後に[=]を押す。
例えば、5の2乗を計算する場合は「5 × =」と入力する。 

累乗(べき乗)計算
操作手順:
「5」 → 「×」 → 「=」を繰り返す。

例:
「5 × = = 」 → 5の3乗(125)
「5 × = = = 」 → 5の4乗(625)
このように「=」を繰り返すことで、累乗計算も可能です(ただし桁数制限に注意)


《問56》
① 30
金融商品取引法により、信用取引の委託保証金は「約定価額の30%以上」かつ「30万円以上」と定められている。

②S社株式:4,000株 × 1,250円(時価)= 5,000,000円
代用掛目:80% → 評価額:5,000,000 × 0.8 = 4,000,000円
金銭担保:2,000,000円
合計担保:6,000,000円
委託保証金率:30% → 売建て可能額:6,000,000 ÷ 0.3 = 20,000,000円
T社株式:1株4,000円 → 売建て可能株数:20,000,000 ÷ 4,000 = 5,000株

③ 現引き
信用取引の決済方法には「反対売買」「現渡し」「現引き」がある。買建ての場合、現物株式として保有するには「現引き」が必要。

④ 6
制度信用取引の弁済期限は「原則として最長6カ月」。

⑤ 品貸料(しながしりょう)
株不足が発生した場合、証券金融会社が調達する費用は「品貸料」と呼ばれ、売り方が負担する。

⑥「増担保規制」は、信用取引における過度な利用を抑制するために、証券取引所が実施する措置で、対象銘柄の委託保証金率の引き上げや、保証金の現金割合の指定などが行われる。

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