今回のテーマは、「遺留分」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2025年1月26日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2025年1月26日実施)《問44》
《問44》 民法における遺留分に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1) 共同相続人の1人が遺留分の放棄をした場合、他の各共同相続人の遺留分の額は、その放棄がなかったものとした場合における遺留分の額と、放棄をした者の遺留分に相当する額に各共同相続人の法定相続分の割合を乗じて得た額を合計した額となる。
2) 遺留分を算定するための財産の価額に算入される贈与財産の範囲は、原則として、被相続人からその相続開始前3年以内に贈与を受けた財産に限られる。
3) 被相続人からその相続開始前に負担付贈与を受けていた場合において、遺留分を算定するための財産の価額に算入する当該贈与による財産の価額は、その目的の価額から負担の価額を控除した額となる。
4) 被相続人の相続開始後に遺留分の放棄をする場合、家庭裁判所に遺留分放棄の許可の審判を申し立てる必要がある。
正解:3
この問題は、民法における「遺留分」に関する知識を問うものである。
遺留分とは、被相続人が遺言や生前贈与で自由に財産を処分できる範囲を制限し、一定の相続人に最低限の相続分を保障する制度である。
1)誤り。
遺留分の放棄は個人的な放棄にとどまり、他の相続人の遺留分の割合や額には影響を与えない。
つまり、放棄した人の分が他の人に加算されることはない。(民法1049条2項)
2)誤り。
遺留分算定の基礎となる財産は、相続開始時の相続財産に、相続人に対する特別受益の額(相続開始前10年以内)と相続人以外に対する生前贈与の額(相続開始前1年以内)を加えた額から債務を控除した額である。
よって「原則として3年以内に限られる」は誤り。
(民法1044条)
3)正しい。
例えば、「この土地をあげるけど、私の借金を返してね」というように負担付き贈与がある場合、
贈与の価値は単純な時価ではなく、「贈与財産の価額 - 負担額」で評価する。
このように、実質的な受益分のみを遺留分算定の対象にするのが正しい考え方である。
(民法1045条1項)
4)誤り。
家庭裁判所の許可が必要なのは、相続開始前に遺留分を放棄する場合のみである。
つまり、生前に「私は遺留分はいらない」と言うときには、裁判所の許可を要する。
(民法1049条1項)
相続開始後に放棄する場合は、自由にできる。裁判所の許可は不要である。
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