FP1級の過去問を解こう(2025年1月)「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」

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今回のテーマは、「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」である。

それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2025年1月26日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2025年1月26日実施)【第5問】

【第5問】 次の設例に基づいて、下記の各問(《問63》~《問64》)に答えなさい。
《設 例》
Aさん(73歳)は、甲土地とその土地上にある自宅兼賃貸マンション、乙土地とその土地上にある建物を所有している。Aさんは、個人で営んでいた機械部品製造業を4年前に長男Cさん(48歳)に承継しており、その際に事業用資産を長男Cさんに贈与している。長男Cさんは、Aさんから使用貸借により借り受けた乙土地上の建物で引き継いだ事業を営んでいる。
Aさんは、先日、ケガで入院したことを機に自身の相続について考えるようになった。
元気なうちに妻Bさん(71歳)と財産や相続開始後の手続について話し合っておきたいと考えているが、話を切り出せずにいる。
Aさんの親族関係図、Aさんが所有している土地に関する資料およびAさんから長男Cさんに対する贈与に関する資料は、以下のとおりである。なお、長女Dさんは、2年前に病気により他界している。また、Aさんは、孫Eさん(16歳)および孫Fさん(14歳)とそれぞれ普通養子縁組(特別養子縁組以外の縁組)をしている。
〈Aさんの親族関係図〉

〈Aさんが所有している土地に関する資料〉
孫Fさん
(Aさんの普通養子)
・甲土地(Aさんが所有している自宅兼賃貸マンションの敷地)
宅地面積 : 198㎡ 自用地価額 : 4,200万円
借地権割合 : 60% 借家権割合 : 30%
※甲土地上にある自宅兼賃貸マンションは3階建て(360㎡)であり、各階の床面積は同一である(各階120㎡)。
※3階部分はAさんの自宅として使用し、妻Bさんおよび長男Cさん家族と同居している。1階および2階部分は賃貸の用に供している(入居率100%)。
・乙土地(Aさんが所有している事業用建物の敷地)
宅地面積 : 100㎡ 自用地価額 : 2,000万円
借地権割合 : 60% 借家権割合 : 30%
※長男CさんがAさんから使用貸借により乙土地上の建物を借り受けて事業を営んでいる。

〈Aさんから長男Cさんに対する贈与に関する資料〉
長男Cさんは、2021年1月にAさんから事業を承継する際、Aさんから機械設備などの事業用資産3,000万円(相続税評価額)の贈与を受けた。その際、初めて相続時精算課税の適用を受け、贈与税を納付している。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと。

《問63》 仮に、Aさんが現時点(2025年1月26日)において死亡し、《設例》の〈Aさんが所有している土地に関する資料〉に基づき、相続税の課税価格の計算上、減額される金額が最大となるように「小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例」の適用を受ける場合、貸付事業用宅地等として適用を受けることができる面積を求めなさい(計算過程の記載は不要)。〈答〉は㎡単位とすること。
なお、甲土地のうち自宅に対応する部分は特定居住用宅地等、賃貸マンションに対応する部分は貸付事業用宅地等、乙土地は特定事業用宅地等にそれぞれ該当するものとする。

《問64》 仮に、Aさんが現時点(2025年1月26日)において死亡し、長男Cさんに係る相続
税の課税価格が6,960万円、孫Eさんに係る相続税の課税価格が1,740万円、相続税の課税価格の合計額が1億7,400万円である場合、次の①~③に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は万円単位とすること。
なお、孫Eさんは、これまでに相続税の未成年者控除の適用を受けたことがないものとする。
① 相続税の総額はいくらか。
② 長男Cさんの納付すべき相続税額はいくらか。
③ 孫Eさんの納付すべき相続税額はいくらか。

一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>【第5問】(2025年1月26日実施)改題・抜粋

正解:
《問63》
110(㎡)
《問64》
① 1,850(万円)② 640(万円)③ 202(万円)

《問63》
特定居住用宅地等(Aさんの自宅)
$198㎡×\frac{120㎡}{360㎡} = 66㎡$

特定事業用宅地等(乙土地)
100㎡

特定居住用宅地等(330㎡まで80%減額)と特定事業用宅地等(400㎡まで80%減額)は、完全併用でき、これらを優先的に適用する。
これらと貸付事業用宅地等は完全併用できないため適用面積の調整が必要となる。

貸付事業用宅地等の限度面積=200㎡ −$(特定事業用宅地等の面積×(\frac{200㎡}{400㎡})+特定居住用宅地等の面積×(\frac{200㎡}{330㎡}))$

特定居住用宅地等:66㎡
特定事業用宅地等:100㎡
200㎡ー(100㎡×0.5 + 66㎡×0.6)
200㎡ー(50+40)㎡
200㎡ー90㎡=110㎡
代入して計算すると、110(㎡)

(参考)
No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)


《問64》
① 相続税の総額
3,000 万円+(600 万円×4 人)=5,400 万円  B、C、E、F
1 億 7,400 万円-5,400 万円=1 億 2,000 万円

1 億 2,000 万円×1/2 ×30%-700 万円=1,100 万円 B
1 億 2,000 万円×1/8 ×15%-50 万円=175 万円 C
1 億 2,000 万円×1/8 ×15%-50 万円=175 万円 E
1 億 2,000 万円×1/4 ×15%-50 万円=400 万円 F
1,100 万円+175 万円+175 万円+400 万円=1,850 万円

〈答〉 ① 1,850(万円)

② 長男Cさんの納付すべき相続税額
1,850万円×(6,960 万円÷1 億 7,400 万円) =740 万円
(3,000 万円-2,500 万円)×0.2=100 万円
740 万円-100 万円=640 万円

〈答〉 ② 640(万円)

③ 孫Eさんの納付すべき相続税額
1,850万円×(1,740 万円÷ 1 億 7,400 万円) =185 万円
(18 歳-16 歳)×10 万円=20 万円
{185 万円+(185 万円×0.2)}-20 万円=202 万円

〈答〉 ③ 202(万円)

前提として妻Bさんは2分の1である。
孫Fさんは代襲相続分と自分の相続分があるので(二重相続資格者)2名分
長女Dさん死亡前の状態では子は4名なので、
Cさん、Eさんは、各2分の1×4分の1=8分の1
Fさんは、2分の1×4分の1=8分の1×2=4分の1

ただし、基礎控除の計算ではFさんは1人としてカウントされる。
また、代襲相続人は、2割加算の対象にはならない。
なお、孫が養子ではあるが、代襲ではない→2割加算の対象となる。

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