今回のテーマは、「所得税における損益通算」である。
問33
所得税における損益通算に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
1) 不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額のうち、不動産所得を生ずべき業務の用に供する土地の取得に要した負債の利子に相当する部分の金額は、給与所得の金額と損益通算することができる。
2) 先物取引に係る雑所得の金額の計算上生じた損失の金額は、不動産所得の金額と損益通算することができる。
3) 生活の用に供していた自家用車を売却したことによる譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額は、給与所得の金額と損益通算することができる。
4) コンサルティング事業を営むことによる事業所得の金額の計算上生じた損失の金額は、不動産所得の金額と損益通算することができる。
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正解は4です。
【前提知識】
所得税における損益通算
それでは、各肢を検討していこう。
1 誤り。
不動産所得の損失のうち、「土地を取得するために借り入れた資金の利子」に相当する部分は、損益通算の対象外となる。
不動産所得の損益通算におけるルール
不動産所得の計算で赤字(損失)が出た場合、原則として他の所得(給与所得など)と損益通算できるが、以下のものは「なかったもの」として扱われ、損益通算できない。
- 土地の取得に要した負債の利子
- 建物部分の負債の利子は損益通算できるが、土地部分は損益通算できない
- 別荘などの「生活に通常必要でない資産」の貸付けによる損失
- 国外中古建物の不動産所得に係る減価償却費(一定の場合)
2 誤り。
損益通算ができるのは、原則として以下の4つの所得(不・事・山・譲)で生じた損失に限られる。
- 不:不動産所得
- 事:事業所得
- 山:山林所得
- 譲:譲渡所得(ゴルフ会員権や別荘などは除く)
雑所得のルール
雑所得(公的年金等、業務、その他)の計算上で生じた損失は、他の所得と損益通算することができない。
申告分離課税
先物取引(FXや商品先物など)による所得は、他の所得と合算せず個別に税率を計算する「申告分離課税」の対象である。分離課税グループの中で生じた赤字を、総合課税グループ(不動産所得や給与所得など)の黒字から差し引くことはできない。
(ポイント)先物取引の損失はどうなる?
他の所得(不動産や給与)とは通算できないが、以下のルールが適用される。
- 同一グループ内での通算
他の「先物取引に係る雑所得等」のグループ内(例:日経225先物の赤字とFXの黒字)であれば、内部で相殺することが可能である。 - 繰越控除
損益通算してもなお控除しきれない損失がある場合、確定申告をすることで、翌年以降3年間にわたって「先物取引に係る雑所得等」の金額から控除することができる。
3 誤り。
資産の譲渡による損失(赤字)が損益通算できるかどうかは、その資産の性質によって決まる。
- 生活に通常必要な動産(家具、衣服、通勤用の自動車など)
- 売却して利益が出ても非課税だが、逆に損失が出ても「ないもの」とみなされる。
- つまり、給与所得など他の所得と損益通算することはできない。
- 生活に通常必要でない資産(別荘、書画、骨とう、貴金属、レジャー用ボートなど)
- これらを売却して出た損失も、原則として他の所得(給与所得など)と損益通算できない。
- ただし、同じ「譲渡所得」のグループ内であれば、黒字と相殺することは可能である。
(まとめ)自動車(生活用)の取り扱い
| 項目 | 税務上の扱い |
| 売却益が出た場合 | 非課税(税金はかからない) |
| 売却損が出た場合 | 切り捨て(他の所得と通算できない) |
4 正しい。
コンサルティング事業で赤字が出た場合、その損失額を不動産所得や給与所得などと損益通算ができる。(肢2の解説参照)
(解法のポイント)
損益通算ができる所得は、以下の頭文字をとって「富士山上(ふじさんじょう)」と覚えるのが定番である。
- 不(ふ):不動産所得
- 事(じ):事業所得 ← 今回のケース!
- 山(さん):山林所得
- 上(じょう):譲渡所得



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