今回のテーマは、「建物の賃貸借」である。
CBT試験問題・2級 学科試験(2025 年5月公表分)
問44
建物の賃貸借に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、本問においては、定期建物賃貸借契約以外の建物賃貸借契約を普通借家契約という。
1) 期間の定めのない普通借家契約において、正当な事由に基づき、建物の賃貸人による賃貸借の解約の申入れが認められた場合、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6カ月を経過することによって終了する。
2) 普通借家契約において期間を1年未満に定めた場合、期間は1年とみなされる。
3) 賃借人は、建物の引渡しを受けた後にこれに生じた損傷があっても、通常の使用および収益によって生じた建物の損耗ならびに建物の経年変化によるものである場合は、賃貸借が終了したときに、その損傷を原状に復する義務を負わない。
4) 賃借人が賃貸人の同意を得て建物に付加した造作について、賃貸借終了時に、賃借人が賃貸人に対してその買取りを請求しないこととする旨の特約は有効である。
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正解は 2 です。
【前提知識】
借地借家法
それでは、各肢を検討していこう。
1 正しい。
正当事由の必要性
賃貸人からの解約申入れには、自己の使用を必要とする事情や、建物の利用状況、立ち退き料の提示といった「正当な事由」が不可欠である(借地借家法第28条)。
終了までの期間
正当事由を備えた解約申入れがなされた場合、その申入れの日から6カ月を経過した時点で賃貸借契約は終了する(借地借家法第27条1項)。
(解約による建物賃貸借の終了)
第27条 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する。
2 前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。
(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第28条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない。
借地借家法(e-GOV法令検索)
2 誤り。
期間を1年未満(例:半年や10ヶ月など)と定めた建物賃貸借契約は、「期間の定めのない賃貸借」とみなされる。(借地借家法第29条第1項)
(建物賃貸借の期間)
第29条 期間を一年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす。
借地借家法(e-GOV法令検索)
3 正しい。
原状回復義務の範囲
- 賃借人が義務を負わないもの
- 経年変化
日光による壁紙の変色など、時間の経過とともに自然に発生する劣化。 - 通常損耗
家具の設置による床のへこみなど、通常の住み方・使い方をしていて発生する損耗。
- 経年変化
- 賃借人が義務を負うもの
- 賃借人の過失・故意・善管注意義務違反によって生じた損傷(例:飲み物をこぼして放置したシミ、壁にぶつけて空いた穴など)。
(賃借人の原状回復義務)
第621条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
民法(e-GOV法令検索)
4 正しい。
造作買取請求権とは
賃借人が賃貸人の同意を得て取り付けた畳、建具、エアコンなどの「造作」について、契約終了時に賃貸人に対して「時価で買い取ってくれ」と言える権利です(借地借家法第33条)。
この規定は「任意規定」であると解釈されてる。そのため、契約書で「退去時に造作の買い取りを請求しない」という特約(造作買取請求権排除特約)を設ければ、その特約は有効となる。
(造作買取請求権)
第33条 建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了するときに、建物の賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。建物の賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする。
2 前項の規定は、建物の賃貸借が期間の満了又は解約の申入れによって終了する場合における建物の転借人と賃貸人との間について準用する。
借地借家法(e-GOV法令検索)
(解法のポイント)
借地借家法には「賃借人に不利な特約は無効」という原則があるが、この造作買取請求権に関しては例外である。
| 項目 | 特約の有効性 | 理由のイメージ |
| 造作買取請求権 | 有効(排除できる) | 賃貸人が「後で買い取らされるなら同意しない」と拒むのを防ぎ、造作の設置をスムーズにするため。 |
| 更新拒絶の正当事由 | 無効(排除できない) | 賃借人の居住権を守るための根本的なルールだから。 |


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