今回のテーマは、「遺族基礎年金・遺族厚生年金等の計算」である。
それでは、「ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2025年9月14日実施)」で出題された過去問にチャレンジしてみよう。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>(2025年9月14日実施)【第1問】
【第1問】 次の設例に基づいて、《問53》に答えなさい。
《設 例》
X株式会社(以下、「X社」という)に勤務するAさん(43歳)は、妻Bさん(38歳)、長男Cさん(11歳)および二男Dさん(8歳)との4人暮らしである。Aさんは、同僚が病気で入院していることを知り、自身が病気やケガで仕事を休むことになった場合の社会保険の給付や、公的年金の障害給付および遺族給付について知りたいと思っている。
そこで、Aさんは、ファイナンシャル・プランナーのMさんに相談することにした。
Aさんの家族に関する資料は、以下のとおりである。
〈Aさんの家族に関する資料〉
(1) Aさん(本人)
・1982年6月25日生まれ
・公的年金の加入歴
2002年6月から2005年3月までの大学生であった期間(34月)は、国民年金の学生納付特例制度の適用を受けていた(保険料は追納していない)。
2005年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である(厚生年金基金の加入期間はない)。
・全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
(2) Bさん(妻)
・1987年8月7日生まれ
・公的年金の加入歴
2007年8月から2010年3月までの大学生であった期間(32月)は、国民年金の学生納付特例制度の適用を受けていた(保険料は追納していない)。
2010年4月から現在に至るまで厚生年金保険の被保険者である(厚生年金基金の加入期間はない)。
・全国健康保険協会管掌健康保険の被保険者である。
(3) Cさん(長男)
・2014年5月13日生まれ、小学生
(4) Dさん(二男)
・2016年10月20日生まれ、小学生
※妻Bさん、長男Cさんおよび二男Dさんは、Aさんと同居し、Aさんによって生計を維持されているものとする。
※妻Bさん、長男Cさんおよび二男Dさんは、現在および将来においても、公的年金制度における障害等級に該当する障害の状態にないものとする。
※上記以外の条件は考慮せず、各問に従うこと
《問53》 仮に、Aさんが現時点(2025年9月14日)において死亡し、妻Bさんが遺族基礎年金、遺族厚生年金および遺族年金生活者支援給付金の受給権を取得した場合、Aさん
の死亡時における妻Bさんに係る遺族給付について、下記の〈条件〉に基づき、次の①~③に答えなさい。〔計算過程〕を示し、〈答〉は円単位とすること。また、年金額の端数処理は、円未満を四捨五入すること。
なお、年金額および給付金の額は年額とし、2025年度価額に基づいて計算するものとする。
① 遺族基礎年金の年金額はいくらか。
② 遺族厚生年金の年金額(本来水準による価額)はいくらか。
③ 遺族年金生活者支援給付金の額(年額)はいくらか。
〈条件〉
(1) 厚生年金保険の被保険者期間
総報酬制導入後の被保険者期間 : 245月
(2) 平均標準報酬額(2025年度再評価率による額)
総報酬制導入後の平均標準報酬額 : 320,000円
(3) 報酬比例部分の給付乗率
総報酬制導入後の乗率 : 1,000分の5.481
(4) 中高齢寡婦加算額
623,800円(要件を満たしている場合のみ加算すること)
一般社団法人金融財政事情研究会 ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<応用編>【第1問】(2025年9月14日実施)抜粋
正解:①1,310,300 円 ②394,632 円 ③65,400円
《問53》
①老齢基礎年金の年金額
・子のある配偶者が受け取るとき
| 昭和31年4月2日以後生まれの方 | 831,700円 + 子の加算額 |
|---|
・子が受け取るとき
- 1人目および2人目の子の加算額 各239,300円
- 3人目以降の子の加算額 各79,800円
831,700 円+239,300 円+239,300 円=1,310,300 円
(参考)遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)(日本年金機構のWebサイト)
②遺族厚生年金の年金額(本来水準による価額)
320,000 円×$\frac{5.481}{1,000}×300月×\frac{3}{4}$=394,632 円
※遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額となる。
※報酬比例部分の計算において、厚生年金の被保険者期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算する。
中高齢寡婦加算
次のいずれかに該当する妻が受ける遺族厚生年金には、40歳から65歳になるまでの間、623,800円(年額)が加算される。これを、中高齢寡婦加算という。
- 夫が亡くなったとき、40歳以上65歳未満で、生計を同じくしている子がいない妻。
- 遺族厚生年金と遺族基礎年金を受けていた子のある妻※が、子が18歳到達年度の末日に達した(障害の状態にある場合は20歳に達した)等のため、遺族基礎年金を受給できなくなったとき。※40歳に到達した当時、子がいるため遺族基礎年金を受けている妻。
設例の場合は、中高齢寡婦加算は適用されない。
(参考)遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)(日本年金機構のWebサイト)
③遺族年金生活者支援給付金の額(年額)
5,450 円×12 月=65,400 円
遺族年金生活者支援給付金
支給要件
以下の支給要件をすべて満たしている方が対象である。
- 遺族基礎年金を受けている
- 前年の所得額(※1)が「4,794,000円+扶養親族の数×38万円(※2)」以下である
※1 遺族年金等の非課税収入は、年金生活者支援給付金の判定に用いる所得には含まれない。
※2 同一生計配偶者のうち70歳以上の者または老人扶養親族の場合は48万円、特定扶養親族または16歳以上19歳未満の扶養親族の場合は63万円となる。
(参考)遺族年金生活者支援給付金の概要 (日本年金機構のWebサイト)


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