【FP1級】2026年1月「民法:相隣関係」

FP

今回のテーマは、「民法における相隣関係」である。

ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2026年1月25日実施)《問36》

《問36》 民法における相隣関係に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、記載のない事項については考慮しないものとする。

1) 共有物の分割によって公道に通じない土地が生じた場合、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地を、償金を支払うことなく通行することができる。
2) 土地の所有者は、隣地との境界またはその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去または修繕のため、必要な範囲内で隣地を使用することができるが、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることができない。
3) 土地の所有者は、他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガスまたは水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができない場合に、継続的給付を受けるために他人が所有する設備を使用するときは、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕および維持に要する費用を負担しなければならない。
4) 共有物の分割によって他の土地に設備を設置しなければ電気、ガスまたは水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができない土地が生じた場合、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地またはその他の隣地に設備を設置することができる。

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正解は4です。

【前提知識】
民法(相隣関係)


それでは、各肢を検討していこう。

1 正しい。

いわゆる「袋地(ふくろじ)」が生じた際、通常のルール(いわゆる囲繞地通行権)では通行料(償金)の支払いが必要だが、分割によって生じた袋地には特別なルールが適用される。

共有物分割による無償通行権(民法213条1項)

土地の分割という「当事者の行為」によって公道に通じない土地が生じた場合、その土地の所有者は、他の分割者の土地償金を支払うことなく通行することができる。

  • 根拠: 分割という当事者間の合意によって不便な土地(袋地)が生まれることがあらかじめ予見できるため、分割後の公平性を保つ観点から認められている。
  • 範囲: 通行できるのは「他の分割者の所有地」に限定されます。全く関係のない第三者の土地を無償で通ることはできない。

譲渡による場合(民法213条2項)

この無償通行権のルールは、共有物の分割だけでなく、土地の一部譲渡」よって袋地が生じた場合にも準用される。

  • 例えば、広い土地の一部を切り取って他人に売却した結果、残った土地(または売却した土地)が袋地になった場合も、その当事者間では無償で通行ができる。
第213条 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができる。この場合においては、償金を支払うことを要しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

民法(e-Gov法令検索)

2 正しい。

不動産の所有者は、特定の目的のために必要な範囲で隣地を使用する権利を持っている。

「土地」と「住家」の違い
ここが試験で狙われる区別である。

  • 隣の土地(庭など)
    必要な範囲であれば、相手の承諾がなくても使用(立ち入り)できる。
    • ただし、相手が拒否する場合は、判決などの強制執行手続きが必要になることがある。
  • 隣人の住家(家の中)
    必ず居住者の承諾が必要である。
    • もし承諾が得られない場合は、たとえ目的のために不可欠であっても、勝手に立ち入ることはできない(判決があっても承諾に代えることはできない。判決そのものが「承諾の意志」に代わって強制的に立ち入る権限を与えるものではなく、最終的に立ち入るには、あくまで相手方の承諾、またはその承諾を強制する手続き(執行)が必要となる)。
(隣地の使用)
第209条 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
二 境界標の調査又は境界に関する測量
三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り
2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
4 第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

3 正しい。

民法第213条の2(継続的給付を受けるための設備の設置権等)の規定に基づく。
令和3年の民法改正によって新設されたもので、インフラ(電気・ガス・水道など)の引き込みに関する権利関係を明確にしたものである。

なお、他人の設備を「お借りする」形になるため、その維持管理コストを負担する必要がある。

(継続的給付を受けるための設備の設置権等)
第213条の2 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
2 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。
4 第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第二百九条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定を準用する。
5 第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。
6 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
7 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

4 誤り。

「共有物の分割」により袋地(インフラが通せない土地)が生じた場合には、通行権と同様に設置場所が限定される。(213条の3第1項)

土地の分割によって、他人の土地を通さなければ電気・ガス・水道などの引き込みができない土地が生じた場合、その土地の所有者が設備を設置できるのは、「他の分割者の所有地」のみである。
この場合、設備を設置するために他の分割者の土地を使用しても、償金(使用料)を支払う必要はない。(213条の3第1項)

213条の3 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、前条第五項の規定は、適用しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

解法のポイント
「共有物の分割」により袋地(インフラが通せない土地)が生じた場合のポイント

  • 根拠条文: 民法213条の3第1項(分割による継続的給付のための設備設置権)
  • 場所の限定: 「他の分割者の所有地」に限定される(=「その他の隣地」は不可)。
  • 償金の有無: 不要(無償)。

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