今回は、「遺産分割前の預貯金払戻し制度」である。
ファイナンシャル・プランニング技能検定 1級 学科試験<基礎編>(2026年1月25日実施)
《問44》 下記の〈条件〉に基づき、長男Bさんが、家庭裁判所の審判や調停を経ることなく、遺産分割前に単独で払戻しを請求することができる預貯金債権の上限額として、次の
うち最も適切なものはどれか。なお、長女Cさんは、被相続人の相続開始前に死亡し
ている。また、記載のない事項については考慮しないものとする。

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正解は2です。
【前提知識】
遺産分割前の預貯金払戻し制度
それでは、問題を検討していこう。
この問題のポイントは、「遺産分割前の払戻し制度(民法909条の2)における、法務省令で定める額(150万円)の上限は、金融機関(銀行)ごとに判定する」である。
相続人と法定相続分
相続人は
- 妻Aさん
- 長男Bさん
の二人のみ。
したがって法定相続分は、
- 妻Aさん:2分の1
- 長男Bさん:2分の1
銀行ごとの預貯金残高
問題文から、銀行単位で合計する。
- X銀行:
普通預金 720万円 + 定期預金 480万円 + 普通預金 300万円
= 1,500万円 - Y銀行:
定期預金 600万円
各銀行ごとの上限計算
ポイントは、「銀行ごとに「残高 × 1/3 × Bさんの法定相続分1/2 」と 「150万円 」を比較し、「小さい額をその銀行での上限とする」である。
X銀行
- 計算式
1,500万円 × 1/3 × 1/2 = 250万円
250万円 と 150万円 の比較→ 小さい方は 150万円
したがって、
X銀行でBさんが仮払い請求できる上限 = 150万円
Y銀行
計算式
600万円 × 1/3 × 1/2= 100万円
- 100万円 と 150万円 の比較→ 小さい方は 100万円
したがって、
Y銀行でBさんが仮払い請求できる上限 = 100万円
Bさんが単独で請求できる合計額
各銀行の上限を合計する。
- (X銀行)150万円+(Y銀行)100万円 = 250万円
したがって、長男Bさんが、家庭裁判所を経ずに単独で払戻しを請求できる上限額は
2)250万円
となる。
(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
第909条の2 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。
民法(e-Gov法令検索)
民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額を定める省令(e-Gov法令検索)
民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百九条の二の規定に基づき、同条に規定する法務省令で定める額を定める省令を次のように定める。
民法第九百九条の二に規定する法務省令で定める額は、百五十万円とする。
(参考)
https://www.moj.go.jp/content/001278308.pdf
(解法のポイント)
「銀行ごとに150万円の制限がかかる」というルールを、X銀行のケース(計算上は250万円だが150万円に制限される)で反映した問題構成になっている。
Bさんの相続分が $1/2$ であることを正確に読み取ることが、この問題を解く最初の重要なステップである。


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