今回のテーマは、「法人契約の生命保険に係る経理処理」である。
CBT試験問題・2級 学科試験(2025 年5月公表分)
問15
契約者(=保険料負担者)を法人とする生命保険等に係る保険料の経理処理に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、いずれの保険契約も保険料は年払いかつ全期払いで、2025年4月に締結したものとする。また、特約については考慮しないものとする。
1) 被保険者を役員・従業員全員、死亡保険金受取人を被保険者の遺族、満期保険金受取人を法人とする養老保険の支払保険料は、その全額を損金の額に算入することができる。
2) 被保険者を役員、死亡保険金受取人を法人とする終身保険の支払保険料は、その全額を資産に計上する。
3) 被保険者を役員、給付金受取人を法人とする解約返戻金のない医療保険の支払保険料は、その全額を損金の額に算入することができる。
4) 被保険者を役員、死亡保険金受取人を法人とし、最高解約返戻率が75%である定期保険(保険期間30年)の支払保険料は、保険期間の前半4割相当期間においては、その60%相当額を資産に計上し、残額を損金の額に算入することができる。
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正解は 1 です。
【前提知識】
契約者(=保険料負担者)を法人とする生命保険等に係る保険料の経理処理
それでは、各肢を検討していこう。
1 誤り。
これは、いわゆる「ハーフタックスプラン(福利厚生プラン)」に該当する。税務上の取り扱いは以下の通りである。
支払保険料の区分
このような受取人の設定(死亡保険金:(受取)遺族、満期保険金:(受取)法人)の場合、支払った保険料は以下のように折半して処理する。
- 2分の1を「福利厚生費」として損金算入
(死亡保険金受取人が遺族であるため、役員・従業員の福利厚生目的とみなされる) - 2分の1を「保険料積立金」として資産計上
(満期保険金受取人が法人であるため、将来返ってくる資金の貯蓄とみなされる)
(ポイントの整理)
| 満期受取人 | 死亡受取人 | 税務処理 |
| 法人 | 法人 | 全額資産計上(積立金) |
| 法人 | 遺族 | 2分の1損金 / 2分の1資産計上(ハーフタックスプラン) |
| 遺族 | 遺族 | 給与として処理(全額損金だが本人に所得税がかかる) |
「全員加入」という条件は福利厚生プランとして認められるための必須要件だが、受取人が法人と遺族で分かれている以上、全額損金にはならないという点に注目しよう。
2 正しい。
終身保険は、いつか必ず発生する死亡に対して保険金が支払われるため、貯蓄性が非常に高い商品である。法人が役員を被保険者とし、法人自らを受取人とする場合、支払った保険料は将来の保険金(または解約返戻金)の前払いと考え、「保険料積立金」として全額を資産に計上する。
(経理処理のポイント)
終身保険の保険料は、期間が経過しても費用化(損金算入)されることはなく、原則として以下のような扱いになる。
- 支払時: 全額を資産(保険料積立金)に計上
- 取り崩し時: 保険金を受け取った際、または解約した際に、資産計上額との差額を雑収入(または雑損失)として計上
3 正しい。
法人が支払う「解約返戻金のない(またはごく少額の)」医療保険やがん保険、介護保険などの保険料は、原則として全額損金(支払時の費用)として処理することができる。
なぜ全額損金になるのか
この取り扱いのポイントは、保険の「貯蓄性」の有無にある。
- 貯蓄性がない
解約してもお金が戻ってこない(掛け捨て)ため、支払った保険料は「その期間の保障を買うためのコスト」とみなされる。 - 法人が受取人
役員が病気やケガで入院した際、法人が受け取る給付金を原資として見舞金を支払ったり、代替人員の確保費用に充てたりすることを想定しているが、掛け捨てである以上、資産としての価値は蓄積されない。
法人向け医療保険・がん保険の経理処理まとめ
(前提:解約返戻金のない掛け捨てタイプ)
| 払込方法 | 年間保険料 | 払込期間中の処理 | 払込終了後の処理 |
| 全期払い | 設定なし | 全額損金 | (保障終了まで払込継続) |
| 短期払い | 30万円以下 | 全額損金 (※1) | 処理なし |
| 30万円超 | 資産計上 (※2) | 取り崩して損金算入 |
(※1) 30万円以下の特例(少額不追求)
本来、短期払いは期間配分が必要だが、1保険契約あたりの年換算保険料が30万円以下であれば、支払時の損金として処理することが認められている。
(※2) 30万円超の処理
支払った保険料を「当期分」と「前払い分」に分け、前払い分を前払費用として資産に計上する。
4 正しい。
2019年(令和元年)の税務通達改正により、法人が支払う定期保険の経理処理は「最高解約返戻率」に基づいて厳格に区分されるようになった。
70%超〜85%以下の定期保険のルール
今回のケース(最高解約返戻率75%)は、以下のルールが適用されます。
- 資産計上期間: 保険期間の前半4割相当期間
- 資産計上額: 支払保険料の60%
- 損金算入額: 残りの40%
解約返戻率に応じた資産計上ルール(まとめ)
| 最高解約返戻率 | 資産計上期間 | 資産計上額 | 損金算入額 |
| 50%以下 | なし(全期間) | 0% | 全額損金 |
| 50%超〜70%以下 | 前半4割 | 40% | 60% |
| 70%超〜85%以下 | 前半4割 | 60% | 40% |
| 85%超 | 前半一定期間 | 70%〜90% | 10%〜30% |
(解法のポイント)
70%を超えると資産計上割合(60%)が損金(40%)を上回る、という逆転現象が起きるラインとして覚えておこう。


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